オレの道程は果てに捧ぐうッ! ~魔王軍や人間の未来など知らん。オレはただ、未来のお嫁ちゃまといちゃらぶ叡智ックスをしたいだけなんだ~
ノーサリゲ
旅路の中で
1-1..あぶ……おぎゃぁ……
黄金の中、一人座り込む者が居た。ただ呆然と座り込む銀髪の少年が、一人ぼっちでそこに居た。
「……もう、何処にも帰れはしないのだな」
黄金の町、生命の息吹すら消えた国、少年の声は誰にも届かない。
「……とりあえず金タマ触るか。……やはり……落ち着くな……」
誰にも、声は、届かない。
* * *
オレは常々思っていることがある。世界とは、何故コレほどまでに叡智で溢れているのだろうと。
スケベな木々、スケベな地面、スケベな生き物達。尽きることの無いいやらしさが世界に溢れて留まることを知らないのだ。もしかして世界は、オレを誘っているのだろうか?
「ばぶ……ばぶ……おぎゃぁ……」
そんな疑問を抱えるオレは今、森の中で母なる大地に横たわり、赤ちゃんプレイをしながら清らかな朝日を浴びていた。
「あぶあぶ……さて」
オレは世界中を旅する旅人だ。このまま赤ちゃんになり続けていては旅路を進めることが出来ないではないか。母よ、ありがとう。オレはそろそろ一人立ちするよ。
立ち上がったオレは、近くの木にかけていたローブを手に取り、大振りにはためかせながら体に羽織る。
襟を正しながら向ける先には、一つの岩があった。その岩は豊かな自然が溢れる森、木々の開けた場所の中心にある人を隠せるほどの大岩。岩の中心には細く鋭い穴が幾つも空いている。
アレは、つい朝の日課で空けてしまった穴、オレのリビドーを放出した結果生まれた穴だ。この力、オレだけの力を受けた岩には、申し訳ないこと――ふむ。
「……ごめんなさいと別れのキスをあの岩に奉げよう。ついでに味見しておくか」
――――オレがこの力に初めて目覚めたのは、今よりも背がもっと小さく、オレの杖ももっと、小さかった頃。
幼かったオレは、同じ村に住む近所の子達と一緒に追いかけっこをして遊んでいた。その最中、オレが追いかけていた女の子が目の前で転び、何故かオレもつられて同時に転んでしまった。何故かだ、他意はない。きっと二人して転んでしまったのは、幼い子供特有の共感性みたいなものが働いたのだろう。
転んだオレは、すぐさま顔を上げたんだ。追いかけていた女の子が泣いていないかが、転んで怪我をしていないかが、ただただ心配で。
だが――目に映ったのは、少女の泣き顔でなければ、血や怪我などでもない――瞳に写したのは、スカートの奥に在る下着だった。子供の小さなお尻を包み込んで守るように張り付いている布、男とは違い何もないなだらかな股間にうっすらと走る筋――――それを認識した瞬間、オレは転んだ状態から動けなくなり……幼いオレのワンドは一人でに脈動を始め、放たれた意志はズボンを破って、地面に小さな穴を生み出した。
それから時が経ち、自分磨きに余念など一切無いストイックな幼少期を過ごしたオレが少年となった頃。暮らして居た村の祭りで、女子と一緒に踊ることとなったのだ。音楽、とも言って良いのか分からないドンチャンした音の中、オレへダンスを申し込んできた女子と手を繋ぎ踊っている
あの、幼いながらに女としての体が出来始めている故の柔らかさは、男のオレにとって衝撃的な柔らかさであり――少年のオレのロッドはその柔らかさの衝撃に耐え切れず、更には衝撃を放出してズボンを穿ち、大人達が飲んでいた酒の瓶を粉々に砕いた。
時が経ち――時が経ち――。
ひたすらに自分をシコシコ磨き続けてきたオレは、今では岩を穿つことさえ容易いほどの実力を身に着けた。
「れろれろ……さて――今度こそ」
岩へと這わせ続けていた舌を離し、オレは気持ちを切り替える。
言葉をわざわざ口に出すことによって無理矢理に気持ちを切り替えたオレは――――近くの木に掛けていたズボンとパンツを取って履き、佇まいを直す。
オレは今、とある目的の為に旅をしている真っ最中なのだ。こんな、自然溢れる美しい森で足を止め続けるわけにはいかない。
「さらばだ、叡智な森の木々達よ。今日中に君達と別れてしまうのが、本当に残念だよ」
ベルトを引き締めると同時に気も引き締めたオレは、名残惜しさを感じながらも森へ少し早めのさよならを告げた。
* * *
オレことデルコイノは、世界中を旅する旅人であり、
世間一般に、『まどうし』とは魔導師を指し、魔導師協会から認められバッジを送られた者だけが名乗ることを許されている称号だ。だが、オレは自分を魔導師とは似て非なる存在だということを自覚している。故に、『まどうし』の音を同じに少し意味を変え、恐らく多分きっとオレの力は魔導師の親戚に当たるだろうということで、自らに真童師の称号を与えた。
まぁ、どちらにせよ真童師と魔導師は、共に叡智を司る者達。叡智に触れたとき、我々は興奮し、己が信念の為に研鑽を積むのだ。
叡智には愛を、そして愛は、穢れ無き純愛を。オレは未だ、心から純粋に愛を奉げられる者を見つけられない孤独な男だ。オレが愛する者を見つけたとき、それは旅の終わりを意味する。故にまだ旅を続けている孤独なオレは、最愛の右手が恋人なのだ。
「フッ……。『オレの銀髪は人の眼を引くし、イケメンで頭も良いから絶対良い人が見つかるわ』か。ありがとう」
森中の道無きを歩く最中、恋人がオレを励ましてくれる。
オレに語りかけてきた右手、
彼女彼女と称しているが、やはりオレは二人ではない、結局一人だ。しかし、愛する彼女と一つになっていると考えれば、この孤独な心にも温かみが生まれると言うもの。
「『この前は彼だったでしょ?』 ああ、その時キミは男で、オレは女になっていたからな。そう思うとオレは雌雄混合体と言っても過言ではないな……オレは人型のカタツムリなのかもしれん」
オレは彼女と談笑をしながら次なる目的地、ハープルという名の町を目指して歩みを進める。
旅先から旅先へ、国から国へ、町から町へ。そうやってずっと移動し続けているオレは、一月前に海を渡りこの大陸へとやってきた。
現在はアウギュス王国という国を歩いており……何を差し置いても一番に上げられる最大の特徴は――魔王国領土と隣接している大国の一つということ。
魔王国の主は、人族の排除を目的とし様々な国や土地へ進行と侵略を繰り返している。長きに渡るその行いは世間の価値観に“悪魔は人類の敵”という認識を強烈に植えつけているが、オレにとってはどうも良いことだ。
オレは愛する人を見つけるために旅をする。ただそれだけをしていたい。人類だとか悪魔だとか、そんなことオレには本当に関係ない。
だがしかし、旅にトラブルが起きた時は対処はする。そしてその時とは、いつも急に訪れるものだ。
「やだ、やめて! だれか……! たすけて……!」
小さく、小さく、風に吹かれればすぐに消えてしまいそうな声が、何処かから聞こえてくる。
あまりにも小さすぎて誰にも届きそうにないその声は、オレであれば聞き逃すはずが無い。
だが、何処から聞こえた、何処から助けを求めている。耳に届いても、声があまりに小さすぎて方向が分からない。眼を向けても周囲にそれらしい人が影は見当たらない、においもしない。
「やれやれ――――絶対に助けるから待っていろォ!」
分からないなら探れば良い、目が、耳が、鼻が、探せないなら別のモノを使えば良いだけだ。
助けを求める声は少女の声だった。少女の声が、悲痛な声が、聞こえたというのに助けに行かないオレはこの世に存在しない。そんな声に応えられないほど、オレはやわやわな男ではないのだ。
「――探れ <赤ちゃんのお部屋は何処かな?《ダウチング》>」
やわやわな男ではないオレは、ガチガチになって周囲を探る。
オレは魔導師の親戚、真童師だ。ならば力を使うには何を使う。勿論、杖だ。故にオレは股間の杖を用いて、ズボンにテントを張りながらダウジングマシンのように右に、左に、揺れ動いて先ほどの声の主を探し始めた。
この力はオレが独自に体得した力の一つであり、一部制約があるものの探したい対象への方向をオレの杖が指し示してくれる能力。ただし、左右の判別は付くが、上下の判別は付かない。基本的には上ばかり指し示すからな。
「……むっ。こっちか」
杖に従い体を回して探っていると、ついに確かな方向を指し示した。
この先に少女が居る、指し示した先に、助けを求めた少女が居る。
股間の
木々の間を抜け、草の地面を、土の地面を、木の根っこを、ブーツで蹴り、ローブをはためかせながらただひたすらに真っ直ぐ走り抜ける。
この先に何が待ち受けているのかなど知ったことではない。だが、助けを求める者がいるのだ。このオレに助けを求めた者が居るのだ。だったら、後先など考えずに助けにいくなど、当然の
全身の筋力をフルに引き出し、オレは地面を抉りながら高速で駆け抜け続ける――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます