5-1.ふざけるなママはオレのものだァ!!
オレが目覚めたのは翌日の昼間だった。
宿屋のベッドにて目覚めたオレの側にはプニマが居て、どうやら彼女はずっとオレのことを診てくれていたようだ。
そうして目覚めた後にプニマから聞いた話は、四天王であるクイダロスが町に齎した被害、復興状況、多くの負傷者は出たが死者は一人としていなかったという報告。
今町でホットな話題となっているのは、クイダロス討伐において功績を治めたSランクパーティであるドラゴ達、ビッ乳、オレに纏わるものが多いらしい。誰がトドメを刺したとか、どうやって倒したとか、国からの報奨金はどれくらいになるのか、といった討伐に関係する話しから、どうでもいい些細な話題まで。とにかく昨日の熱というものはまだ冷め切っていないようだ。
その話を聞いてからオレは側に座っているプニマにお礼を言う。
「先日は最高だった。キミがオレの側にいてくれることを至上の喜びと思う」
「……」
そういうと、プニマは顔を赤面――というよりも赤熱に近いほど真っ赤にし、俯いたままもごもごと話し始める。
「きのうのことわすれてくださぃ……」
「ふむ……ふむ?」
「昨日のコト忘れてください! わたしあんなえっちな子じゃないです! きのうは、えっと、えっと、えっと、事故なんですとにかくわすれてください!」
「ふむ……。キミがそこまで言うのなら……まぁ、忘れよう」
「ホントですか……! ありがとうございます……!」
「代わりと言ってはなんだが、また聞かせてくれ」
「わすれるいみないじゃないですかもうやりませんから!」
…………。
何時までに忘れるとまでは約束していないからな、その内時が来たら忘れるとしよう。それまではあのメスガキプニマを思い出しながら鍛錬をさせてもらう。プニママも良いが、メスガキプニマも良い……彼女はどれだけ新しい顔を見せてくれるのだろうか……。
オレは思う。昨日のプニマはサキュバスとしての側面が色濃く出たのではないか、と。清楚健気ロリでありハーフサキュバスのプニマは、相反する二つの属性を持つロリっ子だ。昨日のアレはその片方であるサキュバスとしての素質が出たというのならば、あの巧みさも納得が出来る。
「あの……でるこいのさん……」
「ふむ、どうした」
「…………その? ですね……。…………あの、ちがうんですけど、その…………きのう、の、いっしょーけんめーな、でるこいのさん……かわいくて、その……い、いえ! なんでもないです!!」
そこまで言っておいてなんでもないと踏みとどまれるプニマは凄い子だ。もう一歩踏み出せば本題に入るというぎりぎりのラインで踏みとどまったような気がしてならない。
はぁ、どうしてプニマはこれほどまでに可愛いのだろうか。
「なんでもなくなった時が来たら言うが良い。オレにできることならば何でもさせてくれ」
「いえホントだいじょーぶです!! あ、あ、それよりも、お昼ごはん食べますか? 食べましょうそうしましょう!」
「ふっ。そうだな、キミがいうのならばそうしよう」
彼女が何を考えているのか、オレは知る事ができない。それでも、ランチに誘われたなら一緒に食べることは出来る。
オレはベッドから降り、プニマと一緒に廊下に出て、階段を下りて食堂へと向かった。
さすれば――
「デルコイノちゃーん!!」
――ふわふわお姉さんに抱き締められた。
なんだこのふわふわはふわふわお姉さんに恥じぬふわふわではないか頭一個分ほど背が低いお姉さんではあるがそれでもオレの頭に腕を回して胸にだきよせてくるふわっふわだこのお姉さんは体中ふわふわだ胸までふわふわだ。聖職者が纏う白い服は息を吸えば良い匂いが鼻腔に入り、乳は乳としての香りを発しているように柔らかなミルクの匂いがする。顔中に襲い掛かるふわふわは一生このままこうして欲しいほど心地良いふわふわだ。
そしてオレはびんびんだ。
「すまないもごもご、ふわふわお姉さん。一旦放してもらっても構わないだろうか。オレは一度部屋に戻るふかふか」
「まだ眠いの? お姉さんが膝枕する?」
もごもごと話すオレは、顔も下も息苦しい。顔の苦しさは一生このままでも問題ないが、下の息苦しさは一旦治めてスッキリしたい。
だが膝枕もやぶさかではないな。このまま部屋に戻ってふわふわを思い出しながらあまあまお姉さんプレイを妄想してスッキリするか、びんびんのまま我慢をして膝枕をしてもらうか――。
「エヴァ姉から離れなさいこのヘンタイ!!」
――オレがどちらを選ぶかあぐねていると、首根っこを掴まれ強引にふわふわから遠ざけられた。チッ、この声を聞くだけで一瞬にして萎んでしまう。何処まで行っても邪魔な女だ。
「なにをする放せこのクソビッチ。この手は綺麗なのだろうな、しっかりと洗ってあるのだろうな」
「今アンタに触ったせいで汚れたわ」
このクソビッ乳は口を開けば人を煽るような言葉しかいわないな。
「エヴァ姉もこんな奴触っちゃダメよ。綺麗な体が穢れちゃうわ」
「こら、ニューちゃん。人にそんなこと言ってはいけません。デルコイノちゃんも、仲が良いからといって女の子に失礼なこと言っちゃいけません。二人共節度をしっかりと守りましょう」
「くッ――!!」
お姉さんからの優しいお説教は体にクる――上の頭が下がっても下の頭が上がってしまうではないか――。
そうして肩膝を付いたオレを、ふわふわお姉さんは『反省できて偉い!』と褒めてくれる。この手はラーニングして堪能したせいで、頭を撫でられているというのに下でも感覚が再生されて――擬似的に扱かれているようなものではないか、思わず放出してしまいそうだ。
「で、デルコイノさん……! ごはん、持ってきました……!」
ムッ。そうだ、今のオレはプニマと一緒にご飯を食べるため食堂へと降り立ったのだ。プニマの為にもここで勃ち止まっているわけには行かない。
――<チン静化>
「やれやれ。すまなかったプニマ……プニマ?」
なぜだろう、プレートを持ったままむーっとした顔をプニマから向けられている。
「ごはん、もってきました……! ごはん、たべるんです!」
「ふむ。そうだな……。?」
可愛らしい語気の強さは、早くテーブルに来てと急かされているような気分になる。
オレがプニマの言葉に従わないわけがないだろう。すぐさま素早くテーブルへと座り――ああ、ドラゴとハイドゥもいたのか。
オレは二人が呆れた眼をして座っているテーブルに誘導され、そしてプニマと並んで座る。
「プニマ、キミの分のご飯が見当たらないが」
「先に食べてしまいました、私の手空いてます、デルコイノさん、あーん、です……!」
「なんと至高な……。あーん、おぎゃぁ」
オレはプニマの娘となって昼食を食べさせて貰う事にした。
プニママはオレが食事と口にすると、にこーっと笑ってくれる。ママの笑顔は最高だ。
「お前さんは寝起きだってのによくもまぁ次から次へと……」
「なんだその呆れた眼は。娘がママからご飯を食べさせて貰って何が悪い」
「貴様もしや何かしらの呪いにでも掛かっているのではなかろうな、というか掛かって居てくれ」
やれやれ。なんだ、嫉妬か。だが、ママはオレのものだ。
オレは娘の特権を行使しながらあーんをしてもらい、そうしている内にふわふわお姉さんがドラゴ側へ、クソビッ乳がオレ達側へ座って、六人でテーブルについた。
「ぷ、ぷにま、アタシもあーんして欲しいなぁ……」
「ふざけるなママはオレのものだァ!!」
「ちょいと静かに、できればデルコイノはそのまま飯を食わせて貰って静かにしててくれ。
お前さんが起きてきたからようやく話が進められる」
「先ず、デルコイノ。我々からの感謝としてこちらを」
そう言ってハイドゥはオレへと袋を差し出してきた。中身など見なくても持った感触で分かる。これは金だ。
「遠慮なく受け取っておこうあーんもぐもぐ」
「あらぁもぐもぐかわい~わぁ、私もあーんしたーい!」
「ダメ、です……! あーんは、私が、します……!」
「エヴァーも黙っててくれ。というか本題に関係ないことは一旦置いといてくれ。
駆け足で話を進めるようで申し訳ないが、俺達ドラゴンテイルはちょいと急ぎで王都に帰らなきゃならなくなっちまった」
「ふむ。四天王を倒したのだ、王に報告せねばなるまい」
「お前さんホント急に……理解が早くて助かる。ウチの国――いや、魔王軍の進行を受けている諸国にとっても、今回の一件は一大事だ。知らせるなら早ければ早いほうが良い」
「……だが、デルコイノよ……可能性の話ではあるが――……」
「このような功績など誰にでもくれてやる。勿論、国や勇者の功績にしたいのならばすれば良い」
「……そう言ってもらえると助かる」
正しい真実よりも偽りの英雄譚の方が有益になることもある。四天王はこの国、アウギュス王国にて倒された。ならばこの国はその功績を欲するはずだ。そして欲するのならどう、有益な偽りをでっちあげるか。
丁度この国には勇者が訪れている。ならば、国が勇者と共に四天王を倒したというシナリオを軸にして色々でっちあげることだろう。
寧ろその方が多くの者に希望の光りが差す。元より皆から希望を向けられている勇者にはもっと信頼が集まり希望の光りが灯る、偉大なことを成し遂げた国は他国よりも優位に立ち、その国に住む王国民は愛国心が強まる。功績の所在とは、正しさよりも影響力を考えるべきものなのだ。
オレが栄光を背負ったとて、照らせる範囲はオレの周りだけだ。ならばもっと有効的に活用できる者達へ渡すほうが、多くの者を照らせるだろう。
「……申し訳ねぇなぁ、デルコイノ……」
「謝る必要は無い。オレには無用の長物だ」
「随分サッパリしてるのねぇ……。四天王を倒すなんて凄い功績よ? デルコイノちゃんは有名になったり、女の子にもてもてになりたーい、って思わないのぉ?」
「功績も名誉も必要ない、純愛さえあれば良いもぐもぐ。そしてオレはモテる男を実践し、あーん、すでにもぐもぐになっているモテモテ」
「あらぁ、そーなの、ふふふ」
ふわふわお姉さんから、まるで冗談を言っている年下の可愛い子を見るような眼で見られる。その眼は大好きだが、オレは可愛くなど無い、カッコいいのだ。
「……しっかし……。まぁ、なんだ。お前さんを信頼していたってのにこういうのもなんだが、まさかクイダロスを倒しちまうとはぁ……一撃でよ」
「ああ。アレは流石に驚いた。これまでも歴代の勇者や英雄譚に謡われる強者達が四天王を葬ることはあったが、一撃で倒した話など聞いた事が無い」
「ねー、びっくりしちゃった。一撃だもの」
「ふむ、なにかやってしまったかな?」
「でもなぁ……戦い方がなぁ……」
「ああ、アレも流石に驚いた。例え勇者でさえ成せしてない偉業を成したとしても、アレは英雄譚に残していい戦い方ではない」
「ねー……ちょっと、えっちな戦い方だったものねぇ……。王様にどうやって報告すればいいのぉ……? ドラゴ、ハイドゥ、任せて良い?」
「んー、そう、まぁ……えぇ……断りてぇんだが……」
「『魔導師が股間の光り輝かせた棒を扱きながら戦いました』などと報告出来るはずも無い……下手すれば狂言と不敬で打ち首ものだ。帰る間にそれらしい説明が出来るようにしなければ……」
「なにやら大変そうだなあーん。ママよ、あたちに飲み物を取ってくだちゃい」
「……。
お前さんのおかげとせいの両面でこっちはあたふた状態よ。でもまぁ、これくらいはこっちがやんなきゃな。一番はデルコイノを王の前に連れて行くことなんだが……」
「「……」」
ドラゴンテイルの男組みはオレを変な目で見てくる。なんだ、何の眼だそれは。ママが羨ましいのか? やらんぞ。
「い、一応聞いておくぜ、デルコイノ。表沙汰にはならないとしても、王様からこっそり褒章や勲章を貰ったりしたい……なんて思ってたりするか? 欲しいなら俺達がもらってきて、渡してやるから、な……? 王に会いたいだなんていわないよな……?」
「要らん、言わん」
「「――」」
オレの返答で、男組みはホッとした雰囲気を醸し出した。まるで、オレを王の御前に連れて行ったら即打ち首確定だろうから連れて行かずに済んで良かった。と、思っているような顔をしているではないか。
王の御前、王の膝元、王都――か。その内立ち寄ることもあるだろう。だがオレの旅路はオレが決める。イく道は何処まで続くか分からない。それでも、旅の終わりには愛すべき者を見つけ、オレは帰る場所を手に入れ――帰り道を手に入れる。オレの旅には、来た道はあれど帰り道などないのだ。どこまでもどこまでも、終わりが見えない道を歩き続けることしか出来ない。
先ほどドラゴ達は、王都に帰ると言っていた。彼らには帰り道があって、帰る場所がある。それは、とても羨ましいことだ。
「急ぐのだろう、ならば早く帰ると良い。良き帰路を、怪我無きようにな」
「お前さん……嬉しい言葉だが、少し寂しいぜ……。でもな、その……まだ、もー少しだけ、良いか?」
「ふむ?」
「あのな、な? ハイドゥ」
「……ああ。貴様には莫大な借りが出来た、何時返し終わるかもわからん。それで、プニマと一緒に町で買い物でもどうだ、何も怪しいことはしない、借りの一部を返すだけだ、な、プニマよ。な」
「えぅ……!? え、え?」
「もぉー、プニマちゃんのこと困らせちゃダメよ。
プニマちゃん、このどーしよーもない怖いお兄さん達、プニマちゃんとお出かけして色々買ってあげたいのよ。かわいがりたーいって、ずーっと言ってるの。ふつーに誘えばいーのにねー。皆でお出かけしーましょ」
「あ、は、はい……! お出かけ、しーます」
ママとふわふわお姉さんはテーブル越しに手を握り合って二人女子女子している。ママもまだ若いからな、遊びたい年頃なのだろう。
「ドラゴ、ハイドゥ、キミ達は娘のオレをダシに使ってママを誘惑しようとしたのだな」
「ち、ちげぇよ? なぁ? ハイドゥ?」
「当然だとも? 我等とて貴様には感謝しているのだからな?」
「はぁー……ドラ兄もハイ兄もこーゆーことには弱いんだから……。ま? アタシはぷ、ぷにまと二回もお出かけしてるからもう慣れてるけど」
「ニュークミルさん! みんなでお出かけです……!」
「うぇへへへ……へへ……ぷ、ぷに、ぷにまとお出かけ……」
まぁ、ママが楽しそうにしてるならば娘のオレは何も言わない。
オレの道程は果てに捧ぐうッ! ~魔王軍や人間の未来など知らん。オレはただ、未来のお嫁ちゃまといちゃらぶ叡智ックスをしたいだけなんだ~ ノーサリゲ @nosarige
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