概要
いちは、大坂城の外を知らない。外について尋ねる相手もいない。
時は戦国。大坂城で日陰の姫と絵師の少年が出逢う。◇
いちは、大坂城の外を知らない。外について尋ねる相手もいない。城内の女達にとって、いちは「死ななければよい」存在であり、お正月に淀の方さまに生きていることをお伝えすればそれで済むのである。
淀の方には、いちの従弟にあたる若君がいて、いちをいじめるのが好きだ。
若君が「かくれ鬼をするぞ」と言い出すと、いちはゾッとする。若君は鬼遊びには必ずいちを入れて、捕まえると髪を引っ張ってぐしゃぐしゃにするのだ。いちがいくら上手く隠れても、若君は御殿女中に命じて見つけさせる。いつもはいちのことなど放っておく女たちは、この時ばかりはいちを執拗に追いかけ、猫撫で声で呼ぶのだ。
(今日もいじめられるのかな)
いちは水甕の裏に隠れながら、とても悲しい気持ちになった
いちは、大坂城の外を知らない。外について尋ねる相手もいない。城内の女達にとって、いちは「死ななければよい」存在であり、お正月に淀の方さまに生きていることをお伝えすればそれで済むのである。
淀の方には、いちの従弟にあたる若君がいて、いちをいじめるのが好きだ。
若君が「かくれ鬼をするぞ」と言い出すと、いちはゾッとする。若君は鬼遊びには必ずいちを入れて、捕まえると髪を引っ張ってぐしゃぐしゃにするのだ。いちがいくら上手く隠れても、若君は御殿女中に命じて見つけさせる。いつもはいちのことなど放っておく女たちは、この時ばかりはいちを執拗に追いかけ、猫撫で声で呼ぶのだ。
(今日もいじめられるのかな)
いちは水甕の裏に隠れながら、とても悲しい気持ちになった
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