第52話 俺のレギーネちゃんが汚された…… ジーク視点

【ジーク視点】


 深夜――

 ギルドハウスの物置小屋。

 俺は、水晶に記録された映像を見ていた。

 レギーネちゃんのお風呂シーンだ。


 (やっぱりレギーネちゃんのお尻は素晴らしいな……)


 大きな桃尻。

 モミモミしてあげたいな……

 レギーネちゃんも、きっと俺に触ってほしいに違いない。


 しかし――


「レギーネちゃん……どうして俺を避けるんだ……?」


 帰還パーティー時、レギーネちゃんは俺を明らかに避けていた。

 まるでゴキブリを見るような目で、俺を見ていた。


 (アルフォンスの仕業だな……)


 全部、アルフォンスの洗脳魔法のせいだ。

 絶対に許せない……!


「俺がアルフォンスから救い出してやるからな」


 アルフォンスをブッ殺して、レギーネちゃんを解放する。

 他のヒロインたちもアルフォンスから取り返す。

 もちろん俺は「レギーネちゃん推し」だ。

 だけど、他の女の子ともイチャイチャしたい……っ!

 ドミナント・タクティクスは、もともとハーレムがコンセプトのエロゲだ。

 特定のヒロインのハーレムに入っても、他のヒロインたちとイチャイチャできる……


 (そこが刺さったんだよな)


 俺のハーレムを奪ったアルフォンスは、何度殺しても殺し足りない。


「殺す、殺す、殺す、アルフォンスを殺す……っ!」


 俺は主人公のジークだ。

 この世界の「正義」は――俺自身だ。

 何が「正義」で、何が「悪」かは、俺が決める。

 主人公は神。

 以上より、俺は神である。QED.(証明終わり)


「さて……今日のレギーネちゃんを見るか」


 水晶のチャンネルを「今日」に切り替える。


 (レギーネちゃんの可愛い寝顔を見ようかな♪)


 しかし水晶に映ったのは、誰もいないレギーネの部屋だった。


「あれ……? レギーネちゃんが自分の部屋にいない……?」


 おかしいぞ……

 まさか――アルフォンスに何されたのか?!

 原作の設定では、アルフォンスは女の子をいたぶるのが趣味だ。

 だからレギーネちゃんに酷いことをしてもおかしくない。

 実際、原作でアルフォンスは、レギーネちゃんに暴力を振るっていた。


 (そこからジークが救い出すのだよな……っ!)


「少し巻き戻してみるか……」


 俺は水晶の映像を巻き戻す。

 10分前に時間を戻すと、


「え……っ? レギーネちゃんがアルフォンスの部屋に……っ!」

 今、午前1時30分。

 そこから10分前だから、1時20分にレギーネちゃんはアルフォンスの部屋へ。


「まだ間に合う……っ! 俺がレギーネちゃんを助けるんだ!」


 俺は物置小屋を飛び出す。


 (やっと主人公らしいことができるぞ……っ!)


 アルフォンスがレギーネちゃんを犯している現場を押さえるのだ。

 アルフォンスをブッ殺す大義を得た……!

 心置きなく、アイツをボコれる。

 そして俺とレギーネちゃんは、結ばれるのだ。


「今助けに行くよ! 俺のレギーネちゃん……っ!」


 ★


「アルフォンスの部屋はここか……」


 ギルドハウスの2階。

 しかも南向きの角部屋だ。

 主人公の俺が裏庭の物置小屋で寝ているのに、モブ悪役のアルフォンスが一番いい部屋で寝てやがる。

 俺は拳を握りしめる。


 (マジでムカつくぜ……!)


 忍び足で、俺はドアに近づく。

 アルフォンスの隙をついて、腹をナイフで突き刺す。

 俺は毒蛾のナイフを鞘から引く抜く。

 息を殺しながら、静かにドアを少しだけ開けた。

 しかしそこには、

 信じられない光景が――


 (な、な、な、何だこれは……あり得ない……っ!)


 レギーネちゃんが……アルフォンスに抱き合っている……

 部屋の真ん中で、レギーネちゃんがアルフォンスに抱き着いている――

 アルフォンスが強引にレギーネちゃんに抱き着いた……わけじゃない。

 レギーネちゃんの横顔を見ればわかる。

 あれは……主人公とエッチする時に見せる表情だ。

 何度もゲームで見た、レギーネちゃんのエッチシーン。

 神絵師の手で描かれた、至高のアへ顔だ。


 (ウ、ウソだ……ウソだ、ウソだ、ウソだああああああ……っ!)


 俺は呆然とする。

 この世の終わりだ……

 あり得ない。

 絶対にあり得ない。

 俺のレギーネちゃんが、アルフォンスと――


 (……そうか。わかった)


 洗脳魔法だ。

 アルフォンスが洗脳魔法を使って、レギーネちゃんに抱き着かせているのだ。

 人形のようにレギーネちゃんを操って、ダッチワイフにしているんだ。


 (うん。そうだ。そうに違いない……っ!)


 鬼畜なアルフォンスがやりそうなことだ。


「……かわいそうなレギーネちゃん。今、正義の味方が助けてあげる」


 ガタ……っ!


 ドアノブに手が当たってしまった。


「誰だ……?」


 (ヤバい! アルフォンスに気付かれた……!)


 アルフォンスはチートコードを使って、無駄に強くなっている。

 だから正面からじゃ勝てないかも……

 いや、主人公の俺なら負けるわけないが、レギーネちゃんを人質に取られたらマズイ。

 卑劣で外道なアルフォンスなら、絶対にそうするに違いない。

 自分が生き残るためなら、容赦なくレギーネちゃんを殺すだろう……


 (アルフォンス……今回だけは見逃してやる。命拾いしたな……っ!)


 窓の外へ脱出した。


「……レギーネちゃんは、絶対に取り返すからな」

 

 

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