第12話
教室に着くとシグルスがセルディと話していた。
教室に入ってきた私に気付くと2人ともこっちへ来る。
「ディディ!遅いからどうしたのかと思っていたんだ」
「お兄様…心配おかけしてすみません」
「セルディ、例の噂の令嬢が彼女にバトルを持ちかけるような話をしていたんだよ」
「なんですって?何故ディディにバトルを…?」
そりゃ多分ゲームでは私がバトルをふっかけて、その後シグルスとの会話って流れだからでしょーねぇ、とは言えない。
「さぁ…私もよく分からなくて…」
そうこうしてると教室にマリアが入ってきた。
ツカツカとお兄様がマリアに話しかけに行く。
んん?攻略対象のランダム会話は席についてからの発生じゃなかったかな?
マリアも『あれ?』って顔してるけどなんか嬉しそうだからいいか。いや、いいのか?まぁいいや。
なんとなく目で二人のやり取りを追う。
シグルスもどうやら観察しているらしい。
マリアがめっちゃ焦ってブンブンと何かを否定してる。
あ、お兄様、機嫌悪そうだけど用は済んだみたい。
真っ直ぐこっちに戻ってくる。
「話しにならないな。ワケわからない事言うしバトルをふっかけた理由聞いたら誤解だって言うし。ディディはどう思ってるの?」
あー…転生者のマリアからしたら兄妹仲が悪いはずのセルディが何故ディルアーナの事を気にするのか不思議だったろうなぁ…。
「正直あまり関わりたくないから特に何とも思ってないわ」
ハッキリそう告げるとシグルスが笑った。
「まぁ、あぁいったよく分からぬ人物とは関わらないのが一番だな」
セルディも大いに納得し頷いた。
「隣の席でないのを祈るばかりだ」
入学式の退出時に渡された席番号を探して着席すると隣は藤色の髪の美女だった。
切れ長の瞳が美しく、白磁器のような肌はまるで陶器のお人形のようだ。
「お隣失礼いたします。私、伯爵家のディルアーナ・ディオ・ブレビリーですわ」
「私は公爵家のリュシルファ・ツィルフェールよ。宜しくね」
もしかしてと思ったけど王太子の婚約者候補!
ほぼ無表情で淡々と挨拶する様はますます人形のよう。
この人が闇落ちするのか…こんな美人が…勿体な過ぎる。
「ツィルフェール様のお隣の席なんて光栄です」
ニコニコと話しかけると影はあるが少し笑ってくれた気がする。
「あの…ブレビリー様…。…もし嫌でなければ、名前で呼んでくれないかしら?」
「良いんですか!?嬉しいです!リュシルファ様も私のこと、ディルアーナと名前で呼んで頂けますか?」
嬉しい申し出につい被り気味で喜んでしまった。
こんな美人を親しく名前で呼べるなんて嫌なワケがない!
なのに少し戸惑ってらっしゃる?
公爵令嬢相手に失礼だったかしら?
「…いいんですの?」
遠慮がちに尋ねてくる。
「え?もちろんです。ダメな理由がありますか?」
名前呼びだとどうなるとか暗黙の了解みたいなのがあったのかしら?
「…その…冷たい人形だと避ける方が多いので…私が怖いとよく言われるんですの…」
あー…『公爵家の人形姫』の噂を気にしていらっしゃるのか…。
公爵家の人形姫。笑わず冷酷。残酷な仕打ちを目の前にしても眉一つ動かさない。
そんな噂なら聞いたことがある。
「あの…人形姫の噂なら聞いたことがあります。ですが実際にお会いすればこんな素敵な方なんですもの。恐れ多さはありますがお近づきになれたら嬉しいです」
本当に人形みたいに冷たい方ならこんな悲しそうな目はしてないと思う。
「ディルアーナ…ありがとう。私、友達がいないの。もし私が怖くないのなら…お友達になってくださる…?」
「私で宜しければ喜んで!」
チラリと王太子ルートでディルアーナはこの人の手先状態だったのが頭をよぎらなかったワケではない。
でも公爵令嬢なのに傲慢どころか無表情で分かりにくいけど心細そうな目をしてる彼女が悪い人なハズがない。
マリアの方へ目をやると宰相子息のバルムが隣の席だったらしく何か会話している。
(そのままバルムルートを進んでくれー)
と思わずにはいられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます