第23話
保養地に来てアッと言う間に3日が経った。
明後日の昼前には王都に向かって出発することになる。
湖の淡水魚を使った美味しい料理に美しい景色の散策、釣りなんかも経験し想像していたよりもずっと楽しかった。
朝は(セルディが監視する中)ダイエットの為の魔力訓練を少ししたり、シグルスとセルディの運動を兼ねた軽い鍛錬の横で魔法支援をしたりを続けたのでリバウンドも今のところしていない。
何より地味な魔力訓練の時間、リュシルファが一緒に付き合ってくれるのが嬉しかった。
相変わらず私が話し、ほぼ聞き役のシル様だけど家から離れてたった3日で表情に変化が出始めた。
なんと、時々口角が上がる様になったのだ!
おかげでお兄様もシル様の微笑みが分かるようになりヤキモチを妬いたシグルス様が若干面倒くさいキャラとなっている。
「シグルス様、お兄様に厳しくなっておられるようですが私、思うのです」
「厳しくなってない。で、何を思うのだ?」
「お兄様は将来の近衛騎士候補です。王太子妃様となられる予定のシル様の表情はある程度読み取れた方が何かあった時にすぐに気が付けるのではないでしょうか?」
「…ふむ」
「そしてシル様が頬を染めて見つめられるのも、憂いある瞳で離れることを寂しがるのもシグルス様だけですよ」
「…それはジグスを含めても私だけだろうか?」
なるほど、近頃のお兄様への威嚇のような行動は八つ当たりもあったらしい。
私たちだけが理解していたシル様の僅かな表情の変化だけど、私たちにも分からないレベルで理解している者、それがジグスさんである。
「私も先日初めてお会いしたので何とも言えませんがジグスさん相手に頬を染めている姿は見ていませんし、ジッと見つめられる相手もシグルス様に限られていますよ?」
「! そ、そうか。ディルアーナ嬢からはそう見えるか」
分かりやすく嬉しそうである。
王太子って雲の上的なスゴい存在だと勝手に思い込んでいたけど思っていたより単純で親しみある人なのかもしれない。
その時早馬で誰かが邸の門からそのまま花畑を抜けていく姿が見えた。
この邸において玄関先まで馬で駆けつけるのは王太子宛の急ぎの知らせを持った者に違いない。
シグルス様がそちらへ向かうのと同時に庭にいるのを執事に聞いたのかその人がこちらへ走り寄ってきた。
「シグルス殿下にご報告でございます!」
その顔は焦りよりも喜びに満ちている。
「お待ちかねの婚約承諾書でございます!おめでとうございます!ツィルフェール公爵令嬢リュシルファ様は本日より王太子シグルス殿下の婚約者となられました!!!」
シグルス様の目が少し大きく開かれ…固まった?
反応が全く無いので私と使者の頭の中は「あれ?」状態で同じく固まってしまう。
「ありがとう!!!」
ワンテンポ置いて大きな声を出すから驚いてしまった。
どうやら使者の言葉を噛み締めていたらしい。
「すまない、待ちかね過ぎてしまって…喜びでも思考は止まるのだな」
少し気恥しそうなシグルス様…顔がニヤけていらっしゃいます緩みまくりです。
その様子に使者の方は思わずといった様子で破顔した。
「急いだ甲斐がありました。おめでとうございます!」
「ありがとう。ゆっくり休んでくれ。あとで褒美もとらせよう」
書簡を受け取りもの凄く嬉しそうなシグルス様は使者と共に邸へ戻っていった。
「あぁ、ディルアーナ嬢、すまないが30分ほどシルが邸に戻らないようにしてもらえないか?」
と、頼み事をして。
ライバル悪役令嬢に転生したハズがどうしてこうなった!? だましだまし @kepe2
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