第16話
今、非常にピンチである。
ここは一階の階段の陰になったちょっとひと目に付きにくい場所。
なんでこんな場所にいるかというと教室移動で階段から降りている時にハンカチが落ちているのを見つけたので拾って届けようと思ったからである。
何故ピンチかというとコレが罠だったから。
「こんな落とし物拾おうとするなんて絶対別人よね!こんなお人好しキャラじゃないもの!転生者なんでしょ?」
こう威圧してきているのはヒロインのマリア。
おおよそ立ち位置が逆だとツッコミたいけど転生者とバレたくない。
「どういうつもり?太ってるし、悪役令嬢としての役割はちゃんとしないし、セルディと仲良いし!」
「いや…どういうつもりかと言われても…」
「そもそもシグルスとバルムが私に冷たいのもアンタのせいでしょ!」
「いや…私無関係…」
「それにアンタが戦わないからレベル全然上がらないんだけど?」
「そこは地道に訓練してよ…」
「は?戦えば早いのにあんなダルいのしろって?」
「暴力反対なんだけど…」
ハーーーッと大きな溜息を吐くマリア…怖っ。
「まぁ今はいいわ、早く渡して」
「ん?何を?」
「招待状!渡されてるの見たんだから!」
「え?」
「あれは2年の夏イベントでしょ!どうやって1年早めたのか知らないけど悪役令嬢のクセに王太子ルート狙ってんの?」
イベントであったのか…そういやそんな事妹話してたっけ…?うーん、忘れてるわ。
「王太子様に頂いた物なのに他の方にお渡しするなんて失礼な事、出来ないわ。何の招待状かも知らないでしょう?」
「あの封筒は保養地への招待状でしょ」
うわー考える間もなかったよー、封筒だけで当てて来たよー、絶対やり込んでた人だよー。
「私、ジグス様ルート狙ってんの!邪魔しないでよ」
ん?そんな人、いたかな?
とりあえずクラスにはいない。
「ジグス様?どなた?先輩?」
「…え?マジなの?とぼけてるの?」
えー本気で分からないから聞いたのにめっちゃ怖い顔してくるんですけど…。
でもルートって言ってたし攻略対象か?まじ誰だ…。
「えー、あんた本当にバグなだけなの?転生者じゃないの?そうかゲーム知らない人?」
「あの…本当に何のことか…」
本気で分からないし全力で困惑していたからかもしれない。何か考え始めた。
よし!この隙に逃げよう。脇をそろーっと抜けたら逃げれるかもしれない。
そろ~…
がしっ!
「どこ行くの?」(ニッコリ)
「あの…教室へ…」
バトル…避けられなかったか…。
覚悟を決めた瞬間だった。
授業の開始を知らせる鐘が鳴り響きマリアの気が逸れた。
「お先に失礼!」
淑女らしさはこの際二の次三の次!
私は一言残して教室まで全力でダッシュしたのだった。
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