第18話

「ディディ…何か痩せた?」

「お兄様…わかります?」


短期遠征からセルディが帰るまでの一週間近く…お母様の『協力』は半端なかった。

(私は#ちょっと__・__#頑張るって言ったんだけどな…)

ちょっとどころかスパルタだった。

本当は痩せてほしかったのかと思うほどに。


まず運動だと強い風の中を走る羽目になった。

風はもちろんお母様の魔法。

どっちに向かおうが常に向かい風。逆風。しんどい。

休もうとすると背中をピンポイントで逆の風が押す。

「ディディ、頑張るのよ~」

なんてニコニコと笑顔で手を振られたら何となく頑張らなきゃいけない気になる。


そして食事。

肉は鶏肉、ササミや胸肉ばかり。

スープは美容に良いからと手羽先で出汁を取ったというもの。

サラダは主にトマト、ブロッコリーなどドレッシングやマヨネーズは無しで私が食べられるもの。

そしてパンは消え、変わりに蒸したジャガイモにバターでなく塩。

甘いモノはフルーツのみだがベリーや柑橘系が大半でたまにキウイフルーツがあるかなって状態。

お茶の時間には例の苦ーい緑茶を出される。


今まで朝はクロワッサンから始まりアフタヌーンティーは欠かさずプチドルチェを堪能。

フルーツといえばマンゴーにバナナなど南国系の物が中心で、バターや生クリームたっぷりの玉子料理やスープ、柔らかぁい霜降りステーキ大好き♡


な、食生活で運動もロクにしてなかった私だもの。

効果は超テキメン!

お母様の美容レクチャーもありやつれた感じも無く見事に一回り小さくなった。

一週間で。

一週間で!(大事な事だから二度言う)


短期間に見た目が変わるほど痩せるなんて思ってもなったしそんなつもりも無かった。

デブって言っても前世の日本では時々見かけた程度で、何もテレビで見る海外の人みたいな極端なデブでは無かったハズだ。

ぽっちゃりって言うと厳しいけどワガママボディなら許されるかな的な…このくらいの体型なら看護師さんにもいたしセーフ!とか思ってる程度のデブだったのに!

一週間で!結果出る程の!ダイエット!


多分そんなダイエット、人は#ちょっと__・__#とは言わない。


「じゃあ俺も協力するよ!魔法もダイエットに良いと聞いたことがあるし一緒に訓練しようぜ」

「えーーーーー!これ以上動くの!?」

「え?聞いた感じ食事と走り込みだけだろ?まだまだやる余地あるじゃないか」


我が兄ながら美形に育ったなぁ~なんて遠い目をしながらお母様に少し似ているキレイな笑顔を見て思わず遠い目をしてしまった…。


お兄様…なんか若干脳筋になってないかしら…辛い。


でも魔法がダイエットに良いのは確かだろう。

お母様を守るために必死で訓練していた時、私は普通に痩せていた。

今と変わらない量を食べてたって事は年齢を考えると今より食べてたと捉えてもいいんじゃなかろうか。

それでも体型は普通でセルディと大差なかったのだ。


「じゃあ同じ威力の水魔法をぶつけて相殺しあおうか。魔力訓練より効率的だし結構しんどいぞ」

ニコニコと提案してくるセルディ。

5日間とはいえ遠征訓練行ってたよね?疲れてないの?


「お兄様は帰ったばかりですし明日からでも「大丈夫!今日は移動しかしてないからさ!」


心配したのにセリフ被せられたー!そして私が大丈夫じゃないわよー!今でも辛いのにやりたくないー!


そんな心の叫びなんか露知らず「遠慮するな」とスチルのようにキレイな笑顔を向けてくれるお兄様…。

ニコッと返すと1つ頷き、私の腕を引いてタウンハウスの訓練場兼中庭に連れて行こうとするじゃないか。


私の笑顔は『わかった!遠慮しないわ』と脳内変換されたらしい。

正解は『断りたいの!分かって!』なのに。

双子だけどこういったテレパシー無効なの辛い。


こうしてお兄様には結果にコミットする某有名ダイエットジムも真っ青のスパルタダイエットを強いられたのだった…辛い。

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