ライバル悪役令嬢に転生したハズがどうしてこうなった!?
だましだまし
第1話
「「セディ、ディディ、誕生日おめでとう!」」
今日は私、ディルアーナ・ディオ・ブレビリーと双子の兄、セルディ・ディア・ブレビリーの7歳の誕生日当日。
藍色に近い濃い青髪色をしたガッシリ逞しい騎士団長のお父様に、美しい銀の髪をもつ若々しいお母様。
揃いの深い緑の瞳が私達兄妹を優しく見守る。
「「お父様、お母様、ありがとうございます!」」
週末にはホールで誕生日を祝うパーティが開かれるのだが当日は今日なので内々にお祝いして貰っている。
当家で働く使用人たちの賄いも今日はお祝いで豪華なはずだ。
私は横に座るお兄様と顔を見合わせタイミングを合わせて大きなケーキに息を吹きかけた。
お兄様は青のロウソク、私は水色のロウソクを吹き消す。
ふー…と息を吹いている時だった。
急に目眩のようなものを感じ、バーッと頭の中に何かが流れる。
走馬灯というのはこういうものか、なんて考えが過るうちにその何かが流れる感覚は終わり拍手の音でハッとした。
両親に使用人たちが手をたたき祝福してくれている。
そこにいるのに、テレビの向こう側の事のような、そこにいないような不思議な感覚に戸惑いつつ(テレビなんてこの世界にないわ…)と思った。
でも私はテレビを知っている。
なんだか急に大人になってしまったような、でもプレゼントと渡されたクマのぬいぐるみはとても嬉しいし子供のままのような、そわそわとして落ち着かない。
(私、どうしちゃったのかしら?何か変だわ?)
そんな事を思いながらケーキを口に運ぶ。
その途端色々どうでも良くなった。
「おっいしーい!」
たっぷりのクリームにフワッフワの生地、フルーツはどれも甘くたっぷりと乗っている。
「ふふっ…ディディは本当にクリームのケーキが好きね」
そう微笑む母はそれはそれは美しい。
いや、お母様めちゃ美人だな!
改めてそんな事を思う。
「俺は甘いのちょっと苦手なんだけどなー」
そう言いながらフルーツの部分を中心に食べるセルディ。
いやっ!可愛いな!超美形キッズじゃん!
「お祝いのものだから少しは食べれないと将来困るぞ」
自分も甘い物が苦手だから気持ちが分かるのだろう。
困ったように笑う父はどうみてもイケオジ。
騎士団長だがゴリマッチョではない。逞し美しい筋肉じゃないか。
なんじゃこの美形一家。
なんで私、改めてこんなの思うの?
見慣れた家族なのに初めて見る感覚もある。
美味しいケーキにパクつきながら家族をじっくりと観察し、部屋に戻って侍女が下がったあと全身鏡で自分を確かめる。
見慣れた顔のはずなのに美少女過ぎて感動する。
私可愛い!可愛すぎ!
お母様の銀髪にお父様の青髪を混ぜたような水色に輝く髪。
両親のように深い緑色したクリクリと大きな猫目。
コレを美少女と言わずして何という。
そうマジマジと全身を見つめていると雷にあったような衝撃を感じた。
自分の中の違和感が繋がりハッとしたとも言える。
(あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ー!わかった!私ってば悪役じゃない!俗に言う悪役令嬢ってやつじゃない!)
気付いてしまった。
そしてあの走馬灯は一回見たやつだ。死ぬ時に。
(私!転生してる!創作物で読んだことある!間違いない!)
ヨロヨロとノートを取り出して記憶を書き出す。
まず、私自身はディルアーナ・ディオ・ブレビリーだ。
間違いない。
でも、ここはゲームの世界だ…。
そんな記憶がある。
前世は日本人の19歳。
産まれてすぐに高校卒業まで生きられないと言われつつ19歳まで生きた私は若すぎる晩年、殆ど病院のベッドで過ごした。
両親は長く生きてくれてありがとうと泣きながら最後まで愛情を注いでくれ、弟と妹も見守ってくれている中、死んだ。
なんとか出席日数ギリギリで高校を卒業した後はずっと入院していた。
体が辛くて恋愛らしい恋愛なんか出来なかった。
そんな私に妹が教えてくれたのがいわゆる乙女ゲーム。
ベッドで出来る恋愛を私は色々楽しんだ。
最後にプレイしたのは私好みの作品を多く出すゲーム会社の新作体験版。
ダウンロード特典に詳細キャラ設定や世界観紹介がありそれを何度も読んでは本編を楽しみにしていたが発売される頃にはゲームが出来る状態じゃなかった。
妹が攻略し、ストーリーを話しスチルを見せてくれる。
それを楽しむのが精いっぱい。
クリア前に死んだ私は悪役令嬢の結末も何も知らない…。
とにかく思い出せる範囲でキャラ設定や世界観、妹が話してくれたストーリーを書き出していく。
ノートに書く文字は当たり前のようにこの世界のものだった。
(やっぱり私はディルアーナだ…)
前世の記憶に色々引っ張られた気がしたけどそうでも無いのかもしれない。
(そういやさっき当たり前に着替えさせてもらったもんな)
前世で元気な時にあんなに着替えさせてもらうとか有り得ないが違和感すら感じなかった。
得も言われぬ安心感を感じ、記憶の違和感も消えた。
(とにかく未来を把握しよう)
私は夜遅くまで作業に没頭したのだった。
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