魯肉飯グミ

 ここはあるくたびれた街。

誰もが疲れ顔で今日を生きる。

くたびれた街のくたびれたビルが有った。

何処にでも有る様な何の変哲も無いただの雑居ビル。



最上階ワンフロアには便利屋が居を構え、三階二階には様々なテナントが入っていた。



BARにパブにスナック。

マッサージ店やネイルサロン。

小さな会計事務所に怪しい骨董屋。



人の数だけ、それぞれドラマが有るのだろう。



中には今日まで、偽の名前を名乗って生きていた者も居るのかもしれない。


中には今日から、本当の名前を名乗って生きて行く者も居るのかもしれない。



ただ一つ確かだったのは、このビルには一人のアイドルが居た。

屈託無く笑うそのアイドルはビルのあちこちを駆け回り、誰しもに可愛がられていた。



そのビルの一階。

一番の古株のコンビニが入居している。

このコンビニの経営者の女性は、とあるマニアから「ゴッドマザー」と呼ばれ崇められていた。



このコンビニを訪れる事は「聖地巡礼」と呼ばれ、今日もマニアの心をくすぐる。



このコンビニがどうして「キワモノ食品の聖地」と呼ばれる様になったのか。



その理由は経営者の女性以外、誰も知らない。



今日もまた小さいお客さんが来店する。



その手に今日は「魯肉飯ルーローハングミ」が握られていた。




fin.






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名前という確かで不確かなものを明日もただ呼びたい 花恋亡 @hanakona

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