第12話 烏山留夏

 風子、玲央、黒い霧はミズカの後に続いた。

「風子ごめんな、うちはついて行けへんから。玲央様、くれぐれも気抜かんようにな」

 モミジは小山に入らず、ふもとで待っているようだった。

 相変わらず風子の側にいる黒い霧を、玲央は怪訝そうに見た。

「お前はついてくるのか?」

 玲央にそう聞かれても、黒い霧はいつも通りそこに揺蕩たゆたっているだけだ。


 神星神社は比較的小さな神社であり、小山の頂上にある。

 すぐ隣には小さな公園が併設されており、その公園の中に留夏はいた。

 ブランコに乗って読書をしていた留夏は、ミズカと風子たちに気がつくと目を丸くして立ち上がった。

「鏡堂くんに、輝美さん。ミズカ、何で」

「もう終わりにしよう、留夏。留夏だって本当は終わりにしたいでしょ?だから今朝、この人の前に姿見せたんじゃないの」

 "この人"と、ミズカは玲央を指さした。

「烏山、とりあえず無事なようで良かったが。どういうことだか説明してくれるか。危険なことに巻き込まれてる可能性だってある」

「る、留夏ちゃん」

 ミズカ、玲央、風子の呼びかけに留夏は読んでいた本を閉じ、風子たちの元に歩み寄った。

「輝美さん、今留夏ちゃんって呼んでくれたね。……でもごめんね、あたしたち、直接会うのも話すのも、これが初めてなんだ」

 留夏は少し微笑んでいた顔を曇らせ、深々と頭を下げた。

「ごめんね。なんだか騙すような真似しちゃったみたいに、なっちゃって。鏡堂くんも。昨日学校にいたあたしは、あたしじゃなかったから」

 留夏はミズカと目を合わせ、決意を固めたように頷くと、

「……全部、全部話すね。ミズカの言う通り、あたしはもう、こんなこと終わりにしたいんだと思うから」

 そう言って、全ての事の顛末てんまつを語り始めた。


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