第14話 水色の逃避行ー中ー
ミズカは人に化けることができる。
容姿から記憶まで全てコピーし、その人物に成り済ます。
しかし、難点だったのは、相手の同意が必要なことだった。
相手からの許可がなければ、ミズカの能力は使い物にはならない。
「ボクは人間でいうところの14年間ほどこの神社にいるんだけどね。ボクのことが視える人もそうそういるもんじゃないし、それはそれは暇な時間を過ごしてきたよ。まあ、人間とは違って、ボクにとっては些細な時間だったけど」
ミズカは留夏の姿になり、喋り方はそのままで、うんざりという顔で話していた。
自分が目の前にいることが不思議でならなかったし、うんざりした表情の自分を見るのも初めてな気がした。
「す、すすごい!本当に、あたしだ……」
留夏の目は好奇で揺れている。
ミズカはきょとんとした後、満足そうに笑うと、
「ありがとう!でも、そんなに驚くことじゃないよ?コツさえ掴めばきっとみんなできるから。あたしで良ければ教えるよ」
今度は留夏の声で、言葉遣いで、喋り方でそう笑ってみせた。
ミズカが留夏になっているとき、本物の留夏は透明人間の様に周りからは見えなくなる。
留夏は逃げたしたいと思っていたはずだが、勉強を疎かにするのはやはり気が引けるし、そうするつもりも元々なかった。叶わない現実と知りながら、神社にお参りに行っていた。
勉強が嫌いなわけではないし、ミズカがいてくれるなら頑張れる気がした。
夏休みの間、ミズカが塾に行ってくれている間は好きなことをしたり、出かけてみた。
もちろん、しっかりと自分で塾に行く日もあった。
留夏の記憶は常にミズカに伝達されるが、ミズカが留夏として過ごした日の記憶は、2人が両手を握り、頭を合わせることで初めて共有される。
ミズカが勉強をしている時間を合わせ、留夏の勉強量は自然と2倍になっていった。
留夏には特段趣味があったわけではなく、勉強が趣味のようなものだった。
強いて言えば、読書とアクセサリー作りが好きだ。
どちらも気が向いたときに行う程度だったが、アクセサリー作りはミズカと一緒に神社でも行うようになった。
夏休みの最終週、ミズカが塾に行っている間、留夏はアクセサリー作りの材料を買いに出かけた。
その道中で、目が合った。
見えなくなっているはずの自分を、当時の玲央は視てきた。
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