第9話 2人の留夏
「俺は霊媒師を引退した方がいいのかもしれない」
昼休み、屋上で玲央はどんよりした顔でそう言った。
屋上は本来立ち入り禁止なのだが、今現在その屋上に玲央と風子はいた。
もちろん、モミジと黒い靄も一緒だ。
「昨日といい、今日といい、玲央様不調続きやからってそんな落ち込むことないで。でも確かに、風子と会ってから何も霊媒師ぽいとこ見せられてへんなあ。むしろ心配されてまうな、このままやと」
「ちょっ、モミジさん!そんなことないですよ、鏡堂さん」
慰めているのか追い込んでいるのかわからないモミジの言動に風子はすかさずフォローに入るが、玲央はため息とともに髪を少しかきあげてへたりこんでいる。
「俺は元より霊媒師には向いていないんだ。霊媒師には、どうしても"素質"の時点で差が生まれる。親が霊媒師でも、全員が素質を持って生まれられるわけじゃない。……俺はそろそろ、引退なのかもしれない」
「風子を後続にしようとしてはるんか?全くそんな弱音吐いてへんで、その今朝の出来事について、さっさと対処せんと」
(鏡堂さんって意外とネガティブなのかな……)
風子は騒ぐ2人の横で、その完ぺきではない人間らしさに勝手に親近感を覚えつつあった。
「えっと、留夏ちゃんがもう1人いたっていう話ですよね」
本題に入る風子の発言に、玲央は何やら言いたげな表情で風子を少し見たが、次第に「そうだ」と頷いた。
「あれからすぐに校舎を探しても、もう1人の方は見つからなかった。今朝一緒にいても気がつけなかったように、近くにいても人間ではないという違和感もない」
玲央は重たそうに腰を上げ、立ち上がった。
「これを俺たちの初任務としよう。風子、今日の放課後、もう1人の烏山を見つけに行くぞ。今度こそ、俺は必ずヘマはしない」
予想外にも、入学2日目のこの日に、風子たちの初任務が始まったのだった。
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