第10話 夕焼けの町

 そんなわけで、放課後はもう1人の留夏探しとなった。

 本物の留夏と偽物の留夏は判別がつかないので、それならばと、本物の留夏にも同行してもらうことにした。

 朝早く教室にいて、風子と話をしていた留夏だ。


「風子ちゃん引っ越してきたばかりなんだもんね!町案内なら喜んでするよ~。でも、鏡堂くんが誰かと積極的に関わるなんてすごく新鮮だなあ。今朝風子ちゃんから聞いたけど、2人って幼馴染なんでしょ?」

「ああ」

 放課後。引っ越してきばかりの風子に町案内をしようという名目で、風子、玲央、留夏は集まった。

 入学初日に風子と玲央は友達という認知をクラスメイトにされたため、その経緯を留夏に聞かれた風子は適当に「幼馴染」と言ってしまった。

 そのことを知らなかったはずの玲央だったが、驚くこともなく澄ました顔でそう短く返していた。

「玲央様、嘘下手なんやけど、ああやって適当に相槌打つだけならピカイチやなあ。表情も日頃からあんまり動かへんしな」

 もちろん、このようにモミジ、そして黒い靄も一緒だ。

「風子ちゃんが元々住んでた町に、鏡堂くんが遊びに行ってそこで仲良くなって、高校でまさかの再会だもんね~!これって運命ってやつなんじゃないかな!?」

「……」

 どうしてそんなストーリー性を持たせたんだ、と言いたげな目を玲央に向けられ、風子は心の中で手を合わせた。



 一通り町を回り、すっかり夕焼け空になった。

 もう1人の留夏を見つける目的での町巡りだったが、引っ越してきたばかりの風子には普通に有意義な時間となってしまった。


「もういい時間だね~!風子ちゃんどうだった?そろそろ帰…」

「烏山」

 地面には3人の影が長く伸びている。

 玲央に話しかけられた留夏は振り返る。

「お前が偽物だ」

 






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