第2話 視える者

「あら、えっと…。鏡堂きょうどう玲央れおくんかしら?遅刻の連絡してくれていたわよね」

「…はい。すみません」

 思わず声をあげた風子と、男子生徒の目がばちっと合った。着物の女の人とも目が合ったが、その瞬間に姿が消え視えなくなる。

 先生は見つめ合う2人を不思議そうに見比べていた。クラス中の視線も、声をあげた風子と遅れてやってきた男子生徒に集まっている。

「2人はお友達かしら?鏡堂くんの席はちょうどそこよ。お隣ね」

「友達です。驚きました。遅刻してすみませんでした、先生。ありがとうございます」

(友達!?)

 真顔でさらっとそう答えた男子—鏡堂玲央は風子の右隣の席に来て椅子を引き、

「久しぶり。よろしくな」

 と仏頂面で言ったのだった。


「風子。一緒に帰るぞ」

 ホームルームでは1人1人自己紹介をしたり先生からの今後の説明を聞いたりと、あっという間に終わった。

 初日は午前中のみなのでこれで帰りだ。自己紹介で特に面白いことも言えず、結局左隣の女子にも話しかけられないまま1日が終わろうとしていた風子は、例の男子生徒に声をかけられた。

「な、何ですか?」

 かろうじてそう発言した。高校では普通に生活する。そう決めたのだ。着物の女の人なんて視なかった、と自分に言い聞かせる。

「友達だから。友達は一緒に帰るものなんだろ。それに、」

 そこで男子生徒—鏡堂玲央は声を小さくした。

「…俺にはお前の側にいる、黒いそいつのことが視えてる。お前だって、着物を着たやつが視えたんだろ?」

 普通の学校生活なんて、風子には無理なようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る