第2話 視える者
「あら、えっと…。
「…はい。すみません」
思わず声をあげた風子と、男子生徒の目がばちっと合った。着物の女の人とも目が合ったが、その瞬間に姿が消え視えなくなる。
先生は見つめ合う2人を不思議そうに見比べていた。クラス中の視線も、声をあげた風子と遅れてやってきた男子生徒に集まっている。
「2人はお友達かしら?鏡堂くんの席はちょうどそこよ。お隣ね」
「友達です。驚きました。遅刻してすみませんでした、先生。ありがとうございます」
(友達!?)
真顔でさらっとそう答えた男子—鏡堂玲央は風子の右隣の席に来て椅子を引き、
「久しぶり。よろしくな」
と仏頂面で言ったのだった。
「風子。一緒に帰るぞ」
ホームルームでは1人1人自己紹介をしたり先生からの今後の説明を聞いたりと、あっという間に終わった。
初日は午前中のみなのでこれで帰りだ。自己紹介で特に面白いことも言えず、結局左隣の女子にも話しかけられないまま1日が終わろうとしていた風子は、例の男子生徒に声をかけられた。
「な、何ですか?」
かろうじてそう発言した。高校では普通に生活する。そう決めたのだ。着物の女の人なんて視なかった、と自分に言い聞かせる。
「友達だから。友達は一緒に帰るものなんだろ。それに、」
そこで男子生徒—鏡堂玲央は声を小さくした。
「…俺にはお前の側にいる、黒いそいつのことが視えてる。お前だって、着物を着たやつが視えたんだろ?」
普通の学校生活なんて、風子には無理なようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます