第4話 開幕の4人

 一瞬の出来事で何が起きたのか風子にはわからなかった。

 何かが飛んできて、玲央は倒れた。肩のあたりから血が流れ出ている。

「鏡堂さん……?」

 気がつけば、周りには恐ろしいほど誰もいない。

 異様なほどの静けさは、明らかに先程までの空気とは違った。

 風子の側に変わらずいる黒い霧も、普段よりうごめき始めている。

「こんにちは。君が未来の女王様かな?」

 声とともに、倒れている玲央の側に銀髪の男が舞い降りた。

 咄嗟に風子はハッとして腰を下ろし、玲央を庇うように抱きかかえる。

 怖くて仕方なかったはずだったが、気がつけば身体はそうしていた。

「女王様がそんな弱いやつ守ってどうするのさ。そいつはいらない、女王様がそう言ったんだよね?」

 殺されると強く確信した。話の内容はよくわからなくても、男の言葉の節々にはそう思わせる響きがあった。

「もういーよ。目覚ましな」

 男は風子と玲央に手のひらをかざし、その手は淡く光り始めた。

 飛んできた矢のようなもの、それと同じような光り方だった。

 激しい衝撃音が響く。

 風子は震えながらも玲央を離さなかった。


 激しい音は、黒い霧と、学校で視た着物の女の人が風子たちを守ってくれたからであった。

 風子たちを守るように、黒い霧はバリアをはっていて、着物の女の人は目にも留まらぬ速さで、銀髪の男に炎のつららのようなものをいくつも投げつけた。

 炎のつららは命中し、銀髪の男は苦しそうな声を上げたあと、すぐに姿を消した。

 

 


 

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