第1話 不幸少女

 高校では「普通」に過ごせるようにしようと固く決めていた。

 常に視えている黒い霧のことは誰にも話さないと誓ったし、霧の方に視線を向けてしまう癖も人前では抑える。

 入学式が終わり、自分の教室ー1年A組に戻ってきた風子は、緊張しながら席に着いた。

 早速打ち解けられている人たちもいるようだったが、まだクラス全体固い雰囲気だ。

 最初の席は名前の順で、風子は教室の真ん中辺りの席だった。左隣の席の女子は主席入学の子で、入学式で新入生代表の挨拶をしていた。まだ教室には戻ってきていない。

 そして右隣の席は朝から空いており、初日から欠席のようだった。

 (こんなんじゃ誰にも話しかけられないな……)

 また小学校や中学校のようになってしまうのだろうか。

 うつむく風子の側には、いつものように黒い霧だけがたたずんでいる。


          


「はーい、みんな!入学式お疲れ様でした!改めまして、担任のさくら沙耶香さやかです。1年間一緒に頑張っていきましょうね。」

 左隣の女子は担任の先生と同時に戻ってきた。話しかける間もなく、すぐにホームルームが始まる。

「すみません、遅れました」

 その時、1人の男子生徒によって教室の扉が開けられた。

「え……?」

 そして、風子の教室での第一声は思わず漏れたその声となった。

 その男子生徒の後ろには、着物を着た女の人が浮かんでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る