第7話 ブタイノシシ討伐!


 

 見渡す限りの草原を緑の風が駆け抜けていく。

 爽やかな香りに包まれる。


「いい匂いブヒ~~」


 大食いタレント白木琢磨は今、異世界を満喫しています!

 

 なんて冒頭で紹介されそうなほどいい絵が俺の前に広がっていた。

 巨大な世界樹を視界の隅に捉えつつ、田舎道を進んでいく。

 茶色い道は踏み固められて歩きやすい。

 

「ふふ、もうじきつきますよ」


 ポンメイさんと二人でお散歩デート中なのだ。

 ごめんなさい、冗談です。行商の途中です。

 エルフの住む場所に心当たりがないか聞いたところ、連れて行ってくれるとのこと。

 なんでも村から一番近い都市がエルフと唯一親交がある都市なんだとか。 運がいいのか、いや転移先を選ぶくらいミリアナ様ならするだろう。


「おお~~!」


 遠くからでも分かる、大きな壁が見えてきた。

 周囲を森で囲まれているがそれを突き抜けて大きく広がっている。


「このペースなら日が暮れるまでには到着しそうかしら」


 朝出発してからもう5時間くらい経っただろうか。

 村を出てから、何度か魔物に襲撃された。

 村を守っていた精霊像の力がなくなったからである。

 

「タクマさん! 左から一頭くるわ!」


「まかせるブヒ!」


 俺は颯爽とポンメイさんの前に出る。

 手には薪割で使った斧!

 不思議パワーの全能感は恐怖心すら麻痺させるのか、それともポンメイさんに良い所を見せたいだけなのか、怖さはなかった。

 俺は魔物と対峙する。


「かかってこい!ぶひ!!」


 俺の挑発に魔物、豚とイノシシを混ぜたような、緑色の体表をしたナニかが向かってくる。

 逆さに生えた鋭い牙で俺のお肉を貫く気まんまんだっ。


『ヴォル!?』


「はっ!」


 大地を踏みしめ、力一杯に斧を横薙ぎに振るった。

 ブタイノシシを両断することはできなかったが、派手に吹き飛ばす。 どう見ても200キロ以上はありそうな巨体のブタイノシシ。 普通だったら手がイカれるか、斧が折れると思うのだが、どちらも問題ない。


(すごいぞ!)


 ミリアナ様に貰ったであろう不思議パワーは武器すらも強化するのか。

 切れ味は増さなかったようだが、耐久力は上がっているようで傷一つない。

 地面に横たわったブタイノシシに止めの斧を振り下ろす。


「タクマさんすごいわぁ!」


「むふう!」


 美人からの称賛の声が心に沁みる。

 

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