第13話

「うまうま」


俺は仕事のあるポンメイさんと別れ都市の探索を開始した。

臨時収入という名のおこずかいもある、ぜひ食べ歩きがしたい。

花と緑の香りに包まれる都市は見事で散歩するだけで心が躍る。

大食いタレントの仕事でも町ブラロケが一番好きだ。

待ちゆく人々の格好もまたファンタジーで楽しい。

冒険者ギルドの看板を見つけさっそくと入ってみる。

ダンジョンに潜っているというエルフと接触するなら冒険者がいいと、ポンメイさんのアドバイスもあり、冒険者登録をすることにしたのだが……、なぜかのフードファイト!

前回までのあらすじ終了。


「トトカルチョはやめらんないぶひね~」


異世界は賭博に緩いらしい。

手持ち3万全額自分に賭けたら90万ギルに増えた。

俺がフードファイトで素人に負けるわけがない。全額ベットに決まっている。なんてうまい勝負なんだろう。絶望に顔を歪めたおっさん冒険者の顔が最高だったね。


1金貨で10万ギル。

街を少し散歩でみたけど、食品とかは安いけどそれ以外は結構高いイメージかな。


「使ってみますか」


騒がしい冒険者ギルドから離れて噴水のある広場にきた。

ここもやっぱり花と木々が豊富で綺麗に整備されていてる。木製のベンチとテーブルまであってまったりとおしゃべりを楽しんでいる街の人たちがいた。

俺はベンチに腰をかけてギルドで買ったあるものを取り出した。


「鑑定のぉスクロールぅう~」


この世界に来てから不思議なパワーを得て、なんとか調べられないかと思ってたんだ。

ステータスオープンとかメニューとか叫んだけどダメで諦めていたのだが、ありましたよ鑑定のスクロール!

某猫型ロボットも真っ青のとんでもアイテムだよね。

これさえあればのび〇君の才能もまるわかりなんじゃなかろうか?


なんにせよ、これで少しはミリアナ様にもらった不思議パワーのことがわかるだろう。


◇◆◇


「それで、アレはなんだい? シャオ」


薄暗い地下室で男女が会話をしていた。

殺風景な部屋だ。

机とタンス、それにベッドがあるだけ。

男女が二人でいればやることは一つしかなさそうだ。


「ふふ、おもしろそうだったから。 連れてきたわ」


「まあ面白そうではあったけど……」


「彼もエルフに興味があるらしいわ」


バンダナをほどいた男は不思議と若く見え長い髪を崩せば印象も変わる。

浅黒い肌をしていたのに濡らした手ぬぐいで拭うと肌は白かった。

すでに露店のバンダナおじさんの面影はない。


「へぇ? 間者には見えなかったけどね」


思い出すのは間抜けそうな太った男。

冒険者ギルドでの話はすでに耳にしている。

もし他国の間者ならばそんな悪目立ちはするまい。


「隠れ蓑にしてもいい。存外役にたつかもしれないわ」


「そうかい?」


たしかに隠れるには大きな体をしている。

多種多様な種族が暮らす都市でも、彼は歩くだけで目立つ。

人族にしては背が高く横にはさらに大きい。

なにより人を小馬鹿にしたような脂肪の塊。笑うだけで顔が揺れる姿は酷く滑稽だ。

特にある種族からは蛇蝎の如く嫌われるのが目に見える。


「エルフに近づけるとは思えないけど……」


エルフにとって脂肪とは絶対悪である。

胸の脂肪でさえ醜いとされるのだ。

鉄の扱いや貞操観念で毛嫌いされるドワーフやアマゾネスと同様に、盛大に嫌われることだろう。


『世界樹の守護者』。

森の引きこもりと揶揄されるエルフは人付き合いが苦手だ。

いや苦手などとは生ぬるく絶壁なのだ。


事実、エルフが都市へとやってきてから多くの者たちが言い寄ったが、誰一人としてその壁は越えられていない。


「面白くなると思うわ。女のカンよ」


「……」


女のカンほど厄介なものはないなと、バンダナおじさんは苦笑を漏らした。


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