第23話


 今日は新しくできた道の駅でお仕事だ。


「凄いクマー」


「ブヒだろ?」


「ぶひー」


 山の麓の道の駅で凄く広い。

 駐車場の広さもそうだけど公園があったり、商業施設の多さも凄い。

 めちゃくちゃ気合入っているのが伝わってくる。 どれだけ費用が掛かったんだろうか?


「『赤熊の郷』なのに熊の毛皮とか大丈夫ブヒ?」


「工事開発中に見つけて射殺したらしいわね」


「わぁお」


 イベント前に広場でリハーサルをしていたのだけど、凄い大きなクマの頭のはく製と毛皮が展示されている。 どうもこの辺りの山の守り神がなんちゃらとか罰当たりとか、地元のお婆ちゃんたちが騒いでいたが、大丈夫か? この道の駅……。


「白木さん、お疲れ様です。 姫白のマネージャーです、本日はよろしくおねがいします」


「はい~、よろしくブヒ」


「ありがとうございます。 姫白は少し車に酔ってしまったようでして、挨拶できず申し訳ありません」


「気にしないぶひ~」


 『姫白水樹』さんのマネージャーさんか。

 なんかだいぶ疲れてそうだなぁ。 やっぱ今をときめくアイドルだから忙しいんだろうな。 頑張ってねと心の中でエールを送っておこう。


「車酔いねぇ……」


「ぶひ?」


「あまりいい噂聞かないのよね、水樹姫」


 おやおや、みほりんたら嫉妬かな? 水樹姫は顔もスタイルも抜群だからね。 みほりんも顔は可愛いけどお胸がね?


「ああ゛? ひゃっぺん死んどくかぁ、白豚ぁあ゛?」


「ぶひぃ!?」


 心の声が漏れたっ!?



◇◆◇


 はぁ。

 かったるいな~。

 ジジイとババアとクソガキばっかりじゃん。


「さぁでは本日のメインイベントを開催いたします! 水樹姫こと『姫白水樹』さん、ご紹介をお願いいたいます!」


「はぁい。 『赤熊の郷』の絶品☆名物グルメ~~ポータン丼です! 赤熊の郷自慢のお米とブランド豚『ポータン』をローストビーフにして合体させた究極の丼です! 使われる卵や野菜も地産地消でぇす。 う~ん、水樹も早くたべたぁ~~い♡」


 おうおう、今日も奴隷どもはちゃっと出勤してるな。

 『姫コール』にジジババどもびっくりして心臓とまりかけてるぞ。


「ご紹介ありがとうございます! いやぁしかし、水樹姫のファンの方たちは気合が入ってますねぇ!」


「みんなー! 来てくれてありがとう、水樹嬉しいよー!!」


 ファンサファンサ。

 あいつらは大事な金づるだからね。 


「はぁい! なんとぉ『赤熊の郷』ではオープンを記念してポータン丼のメガ盛りチャレンジが開始しましたぁ! 栄えある最初のチャレンジャーは、この5人でぇーす♪」


 ほんとに食えんのかこんな量……。

 

「おお……これは、凄いですね」


「ソウデスネ……」


 特注の巨大丼に肉の華が咲いている。


 いやぁ、インスタ映えしそうでしないなぁ。

 ネタにはなりそうだけどぉ。

 でもこういうのって完食者0だと萎えるんだよねぇ。

 食べきったら無料とかいって、どうせ無理な設定で逃げてるだけ。

 たまにレポートするときあるけど、6年完食者0なんですよ~とか、お前の設定がクソなんだろと。 ドヤるな油くせぇんだよと、言いたくなっちゃうんだよね~~。


「そして最後はこの人、日本最強の大食いタレント『白木琢磨』選手だぁーー!」


 ほんとデブだなぁこいつ。

 ニヤニヤこっち見て気持ち悪いんですけどぉ。


「白、木選手ぅ~がんばてぇ♪」


 あっぶね。

 白豚(笑)って呼びそうになったわ。


「頑張るブヒーー!!」


 嬉しそうにしちゃって。

 なかなかいい信者ファンになりそうじゃん?

 少しは優しくしてやるか。


「それでは! 60分一本勝負……スタートです!!」


 頼むから完食してくれよな、白豚。

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る