第22話
「あいつまだ食べてるの?」
温泉から上がったみほりんは自身のタレントの食欲に慄いた。
もう2時間は食べ続けている。
「また限界が伸びたのかしら?」
いくら日本人最強の大食いタレントといえど、限界はある。
ちょうど終わるくらいに様子を見に来たのだが、まだまだ余裕そうであった。
「成長期ということなのかしら……」
叔父である会社の社長が言っていた、あいつはまだまだ成長期だという言葉に納得がいった。
まるでマンイーター。
底なしの胃袋を持つ男である。
「叔父様の計画も前倒しできそうね。 フフフ」
可愛い顔で邪悪な笑みを浮かべるみほりんであった。
◇◆◇
「なんで男性ゲストがよりによって白豚なのよ!」
若い女のヒステリックな声が車の中で響く。
彼女のマネージャーは慣れた様子で気にもしていない。
今をときめくアイドル『姫白水樹』。
今年のアイドルランキングTPO10に入る新進気鋭のアイドルである。
愛称は『水樹姫』であり、姫なのである。
我儘な性格でも顔とスタイルが良ければ逆に受けるのがアイドルだ。
むしろ罵られたい踏まれたいというコアなファンによってランキングが押し上げられている。
「しょうがないですよ。 スポンサーの意向なので」
「はあ!? そこを何とかするのが、あんたの役目でしょう!?」
違います、と思ったがマネージャーは平謝りだ。
口ごたえをすれば100倍で帰ってくるのが分かっているから泣き寝入りするしかないのである。
「もううう。 大食いタレントならもっといっぱいいるじゃない? 可愛い系もカッコイイ系もさぁ? なんでよりによってクソブタなのよぉおおおおお」
だからスポンサーの意向だっつの、とは口が裂けても言えないマネージャーであった。
「しかもド田舎。 虫とかほんと無理だから。 あー早く終わせて帰りてぇ~~」
ファンがみたらドン引きの座り方でおっさんのようなコメント。
こいつ絶対ドッキリとか無理だわ、とマネージャーは思った。
「いいじゃないですか、田舎。 空気も美味しくて料理もうまいですよ」
「空気ぃい? あんたは空気読んで水でも買ってきなさいよ。 それから日焼け止めも買ってきて、クソデブには挨拶とかいらないでしょ?」
「いやぁ……先輩なのでしたほうが良いと思いますが……」
「弱小プロダクションなんて放っておけばいいのよ!」
「はい……」
もうダメだ。誰かこいつをなんとかしてくれと、マネージャーは神に祈る。
その願いが通じたのであろうか。
この後、彼女には天罰が下るのであった。
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