第6話


 「心配しなくても大丈夫よ」


 こんな小さな村で食べ過ぎてしまったかな?と心配したのだけど。

 ポンメイさんマジ天使。

 全然俺を蔑んだ目で見てこないし。


「タクマさんはどこから来たの?」


 俺が無害だとわかると、村人さんたちはもう畑仕事に戻っていった。

 苗字はないようだったので、下の名前を名乗った。

 この世界の情報が全然ないから、変な誤解をされても困る。


「それが……迷子で分からないブヒ」


「迷子!? 大人の癖にダッセェ!!」


 ギャハハと指をさして嗤うクソガキ。

 オルコ君の煽りスキル高杉。

 なぜ天使からこんなクソガキが産まれるんだ?


 少々苦しい言い訳にもポンメイさんは深くは聞いてこなかった。

 大した荷物も持たず変な格好をした迷子のクソデブなんて怪しすぎるだろうに……。


「平和な村ブヒね~」


 高齢の人が多い。 子供はほとんどいないようだ。村を守る設備みたいなのは皆無。兵士みたいなのもいないし、不用心すぎないか?

 モンスターとか盗賊とか不安だろう。

 少なくともオークはいるみたいだし。


「精霊像があるからな!」


「精霊像?」


「精霊像の力で魔物はよってこないんだぜ!」


 オルコ君のドヤ顔いただきました。

 なんでも村の中央にある精霊像の力で魔物はよってこないらしい。

 

「へぇ……」


 ミリアナ様の話しにあった精霊王とかと関係あるのかな?

 

「エルフってこの辺に住んでたりするの?」


 何気なく、俺は聞いてみたんだがポンメイさんは慌てて口元を抑えてきた。 ちなみにその豊かな双丘は俺の豊かな双丘に弾かれている。


「エルフ様よ、タクマさん。どこに精霊の目があるかわからないのだから」


 そういったポンメイさんの言葉はすこし冷たく感じた。



☆★☆



 全身の脂肪が震える。


「ぶひぃ!」


 いつ以来だろうこんなに体を動かしたのは。

 日々の趣味のサウナで発汗はいいんだ、単に太っているからかもしれないが、滴る汗が吹き飛んでいく。


「たすかるわ~タクマさん」


 振り上げた斧を振り下ろす。

 ただそれだけの動作なのに物凄く疲れる。

 薪割って大変だなぁ……。


 食事のお礼に力仕事を始めたのはいいけれど、これ幸いと色々な仕事が振ってくる。

 村のご老人方がいっぱい持ってくるからだ。

 謎の力がなければすぐにへたっていたに違いない。


「気持ちがいいぶひぃ……」


 冷たい水に労働の喜びが詰まっている。

 働いた後の水ほどうまいものは無い。

 いや、金の麦のやつがあったか。


 リリアナ様からもらった加護の力。

 おそらく食事によって力を得る能力か。

 体内にエネルギーを蓄え、不思議パワーとして使える。

 筋力も上げることができるようだ。


「ぶひぃいいいいいいいい!!」


「すげぇ!! オークすげぇええ!!」


 抜けなくて困っていた畑の切り株を引っこ抜く。

 大地が裂け太い根が面白いように引きずり出される。

 なんだこのパワー!


「ぱぅわああブヒーーーーー!!」


 大地は悲鳴を上げて切り株が盛大に吹き飛んだ。

 周囲で見ていた、まだどか信用していなかった者たちも、驚き喝采を送ってくれた。

 やはり現地のみんなと一緒に働くと仲良くなれる。

 大食いタレントとして世界を歩いて身に着けた処世術。

 異世界でも通用するようだ。


 その日の夜の宴に呼ばれてたくさんのご馳走を振舞ってもらえたのだから。



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