第34話 進む会議
俺という、愛坂学園に唯一の男をどう使うか。そのために、男に何をされたら嬉しいかを話していくのだという。どうせなら、細かいところまで聞いていきたいところだな。
「とりあえず、ブレインストーミングの形で行うのはどうだ? 意見の是非は、後で考えればいいだろう。まずは、思いついたことを全部言っていこう」
「そうしてしまうと、とばり君に不愉快な言葉を聞かせてしまうかもしれませんっ。大丈夫ですかっ?」
「問題ない。良いイベントを実行するためなんだ。大事なことだろう」
「会長、とばり君の勇気を無駄にしてはいけませんよ。こんな機会、二度と無いんですから」
勇気というほどの勇気なんて出していないが、まあ、今の空気に水を差すのもな。なんか、みんな感動している雰囲気だし。
せっかくだから、どんな妄想をしているのか聞いてみたいという興味も、半分くらいはあるからな。面白い意見があれば、ガチ恋チキンレースに採用してもいいだろうし。
俺としては、そこまで負担ではない。流石に、本気でR18の話を始められたら困るだろうが。とはいえ、学校のイベントって話で、18禁の意見は出ないだろう。
まあ、総じて大したことではないんだよな。だから、あまり恩みたいに感じられたら面倒だ。
「じゃあ、あたしから。ハグなんて嬉しいんじゃないか?」
「提案。コスプレというのはどうだろう」
「セリフを音読してもらうのも、ドキドキしちゃうかも」
思っていたよりも、ずいぶんと軽いな。それくらいなら、いつでも良いんだが。まあ、特別感があった方が良いし、安売りはやめておくか。
というか、その程度で良いんだな。俺なら、もっとキツめの妄想をしている気もする。まあ、本人の前で妄想を言うのも、それは恥ずかしいか。
まあ、みんなは真面目にイベントとして話をしているんだ。あまり軽く見るのも問題だよな。
「私なら、歌を聞いてみたいと思いますっ」
「執事喫茶のようなものはどうでしょうか。会長の好みでしたよね」
なるほど、そういうのが好きなのか。参考になるな。声を作ってみるのも、悪くないかもしれない。ちょっと低めの声で、試してみよう。
「お嬢様、お席へご案内いたします。みたいな感じか?」
「あっ……。って、そうじゃないですっ! 流石に、準備期間が足りませんよっ」
ブレインストーミングであることも忘れて、意見を否定してしまっている。流石に、自分の妄想を真似されるのは恥ずかしかったか。反省だな。
とはいえ、俺は今言われたくらいのことならできる。そのアピールにはなっただろう。良いところもあったはずだ。
イベントを成功させるために、本気で頑張っていきたいんだ。まあ、歌は下手だと思うから、勘弁してほしいが。
というか、歌った経験がない。だから、どうして良いのか分からないというのが正確なところだ。
まあ、他の意見も聞いてからだな。とりあえずは、意見が出尽くすまでは待ちたい。良い意見は、たくさんアイデアが出てこそだと思うからな。
「改めて提案するとなると、案外出てこないな。あたしも、色々と考えてはいたんだけど」
「そうですねっ。意見として出すほど、具体性がない時もありますしっ」
「同感。男の人にしてほしいことは、恋人同士のものが多い。とばり君にやってもらうのは難しい」
「なるほど。表に出せないあんな事やこんな事を考えていると。会長も、女なんですね」
「人に言えないことを考えるのは、仕方ないよ。だって、ウズウズしちゃうもん」
まあ、俺だって人に言えないような妄想をしたことくらいある。だから、気持ちは分かるつもりだ。というか、しない人なんているのか?
良い意見が出ないのなら、このまま決めてしまうのだろうか。俺としては、いま出た意見くらいなら、何でもするつもりだ。まあ、歌は恥ずかしいが。
「別に、さっきまでの意見くらいなら、全部やっても良いぞ」
「ありがとうございますっ。なら、もう少し詰めていきたいですねっ」
「提案。男の人は、みんな全然知らない。質問の時間を作るのはどうか」
「他にも、リクエストを聞いちゃうのも良いかも? きっとワクワクできるよ」
「確かに、悪くない意見ですね。会長、その方向性でまとめてみますか?」
「そうですねっ。なら、意見箱を作っていきましょうっ」
なるほどな。1回否定された意見だが、実際に意見が通るのなら、ありということか。いや、表に出してアピールするのなら、良い意見ということかもな。
どちらにせよ、どんな意見が出るのか楽しみだ。俺も、生徒たちに注目されれば便利ではあるからな。ガチ恋チキンレースの上で、知名度は重要だろう。
今のところは、人数は絞っていく予定ではある。里緒奈会長、明陽さん、遠野さんが中心のつもりだ。だが、先のことを全く考えないのも、面白くないからな。
まあ良い。今は、イベントの話だ。とりあえず、意見を集めることに決まった。なら、どんなアンケートにするかを決めていくはずだ。
「例えば、男の人に聞きたいこと、みたいな感じでアンケートを取るんだよな?」
「そうですねっ。禁止事項なんかは、これからまとめていきますっ。言われたら嫌なことはありますか?」
「流石に、R18の意見は嫌だな。それくらいしか、今は思いつかないな」
「注意。公序良俗に反する意見は禁止する。まずはひとつ」
「私は、ドカドカ書くのはダメだと思うな。ひとり意見はひとつまでじゃないかな?」
「あたしは、質問とリクエストがそれぞれひとつが妥当だと思う」
「私としては、フリーテーマではなく、こちらで方向性を提示するのが良いと思います」
方向性が決まったら、一気に意見が出てくるな。とても優秀な人達なんだと思える。というか、どの意見も納得できるものばかりだ。やはり、生徒会に入るだけあって、能力が高いんだな。俺も、置いていかれないようにしないと。
「それなら、質問はフリーテーマで、リクエストは何かを絞るのはどうだ? 言って欲しいセリフとか、来て欲しい衣装とか」
「なら、言って欲しいセリフが妥当だな。衣装はたくさんは用意できないよ」
「それなら、決まりですねっ。こちらで意見をまとめておいて、最後にとばり君に確認してもらおうと思いますっ」
「会長が、自分の好みの提案に絞らないか、しっかりと見ていかないといけませんね」
「同意。あまり方向性が偏っていると、不満が出ると予想」
「気にしなくて良いんじゃないかな。とばり君がワクワクできる方が、大事だよ」
色々と気を使ってもらって、ありがたい限りだ。それに、俺の提案を形にするために、みんなで頑張ってくれている。
だから、全力でイベントを成功させるために突き進もう。それが、みんなの期待に応える、一番の道だろう。
それに、うまく行けば、会長の好感度を高めることもできるはずだ。色々な意味で、頑張っていきたいところだ。
本当に楽しみだな。イベントが成功した光景が、今から見えるようだ。生徒会のメンバーなら、必ず成功させられる。そう信じられるからな。
「みんな、ありがとう。みんなの期待以上の成果を、出してみせるからな」
そう言うと、みんなが微笑みかけてくれた。もう、俺は生徒会の一員なんだ。そう信じることができた。
だからこそ、全力を尽くそう。みんなが喜んでくれる光景を見るために。
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