第11話 次への準備

 家族と仲良くなることには成功したし、後は高校をどうするか、警護官がどうなるかが問題かな。もちろん、もっと家族と仲を深めていく努力は欠かさないつもりだが。


 ということで、母さんと話をすることにした。高校についてだ。まあ、基本的には任せたほうが良いだろうけどな。前世では病室にだけいたし、今は前提となる知識が足りない。


 自主性がないとか言われそうだが、素人知識で馬鹿な真似をするよりはマシだろうと思う。俺には全く知識がないからな。何をするにしても、まずは相談からだろう。


 まあ、ガチ恋チキンレースができそうな学校の方が良いが。つまり、男子校は除外される。とはいえ、学校に通う男がどれほどいるのかと考えれば、男子校なんて存在すらも疑わしい。まだ調べていないが。


 仮にあったとして、地元からは離れることになりそうだな。全寮制みたいなところに通う羽目になる気がする。それは嫌だ。できるだけ、家族と過ごしていたいからな。


「母さん、高校とか護衛官の話は進んでいるのか?」

「ちょうど良かったわ。高校も護衛官も、ある程度は絞れたのよ。あとは、とばり君の意見を聞きたいなって思ってたのよ」


 なるほど。間違いなく良い意見は言えないが、俺の意志を反映されるつもりでいてくれることは嬉しい。


 とはいえ、難しいんだよな。常識をまるで知らないから、判断基準がない。俺が考えて決めたとしたら、きっと間違えると思う。いずれは、自分で判断できるようになりたいが。


「どこが良いかは決めにくいな。どんな学校や人が良いかなら言えるのだが」

「分かったわ。まずは、学校ね。今ある候補だと、公立校と私立校ね。どっちも地元なんだけど、方向性が違うのよ」

「どんな感じなの?」

「公立校は、お硬い雰囲気ではあるわね。風紀がしっかりしているわ。私立校は、自由な校風よ。でも、問題のある人は入れないわね」


 その2択なら、ガチ恋チキンレースができそうな私立校の方が良いが。とはいえ、もう少し情報が知りたい。いや、母さんが他の候補は捨てているのだろうし、そのあたりは信用していいか。


「どっちかというと、自由な方が良いかな。でも、私立なんだよな。学費は大丈夫か?」

「そこは心配しなくていいわ。補助金が出るからね」

「なら、安心だな。それなら、私立の方で大丈夫そうか?」

「うん。どっちでも大丈夫だと思って相談しているもの」


 それなら、私立を選んでも問題なさそうだな。よく分からないまま選んで、妙な学校に行ってしまう心配は無さそうだ。


 これなら、後は警護官についての話になるかな。とりあえず、顔を合わせて決めたい気がするが。どうだろうな。男が少ないのだと、個人情報は守った方が良いのか?


 まあ、問題がありそうなら母さんの方から止めてくれるか。なら、あまり気にしなくても大丈夫だろう。


「だったら、安心だな。母さんが問題ないと思っているのなら、大丈夫だろう」

「信じてくれて嬉しいわ。でも、嫌になったらやめても良いのよ」

「無理はしないよ。でも、できる限り頑張っていきたいな」

「なら、応援しているわね。とばり君が楽しんでくれることが、一番だもの。どうせ補助金が出るから、生活には困らないもの」


 とはいえ、母さんも仕事をしているっぽい雰囲気はあるんだよな。何をしているのかは知らないが。一緒に居られる時間が長い方が良いが、本人がやる気なら止めるのも問題だろうさ。


 俺としては、楽しい時間を過ごせるのは嬉しいが、大切な人に一緒に居てほしい。まあ、相手にも相手の都合があるからな。無理強いはできない。


「それなら、後は受験だったか。いや、願書を出せば通るんだっけか?」

「一応、面談はあるみたい。書類審査も。犯罪歴があったりすると、ダメみたいね」

「なら、俺は問題ないと考えて良いのか?」

「ええ。過去のあなたが何か問題を起こしたことはないわ」


 それは良かった。知らないところで道が絶たれていたら、困るどころじゃ済まなかっただろうからな。


「じゃあ、面談に向かう日までに準備をしておかないとな」

「そうね。でも、とばり君なら、絶対大丈夫だと思うわ」


 何を判断基準にしているのか分からないが、まあ大丈夫と言われるのだから大丈夫なのだろう。気負いすぎても良くないし、落ち着いていこう。


「じゃあ、後は警護官を決めないとな。どうやって決めるの?」

「あと2人までは絞っているわ。ここから、どちらかを選んでほしいの」

「会う訳にはいかないのか? できれば、顔を合わせて決めたいんだけど」

「ちょっと厳しいわね。あまり、情報を広めると大変なのよ」


 よく分からないが、そういうものなのか。じゃあ、どうやって決めれば良いのだろうか。


「それなら、どっちがオススメとかはあるのか?」

「今のところは、どちらも同じくらいね。だから、軽く説明していくわ」


 その説明によると、片方が職務に忠実という評判で、もう片方が親身になってくれるとのこと。俺としては、百合子さんのことを思い出すので、職務に忠実な方が好みかな。


 なら、決めた。新しい家族になってくれるかもしれない人だからな。しっかりと仲良くしていきたいな。


「その2人なら、藤崎ふじさきさんの方が良いな。仕事をちゃんとやってくれる人なら、信頼できそうだ」

「なら、決まりね。後は会社に連絡しておくわね。早ければ、明日にはやってくるわ」

「楽しみだな。もしかしたら、百合子さんみたいに仲良くできるかもしれないし」

「そうね。きっと、良い人だと思うわ。難しい試験を突破しているし、評判もいいみたいだから」


 まあ、評判ぐらいなら擬態はできると思うが。それでも、良い人であることを祈ろう。親しくなっていけたら、きっと楽しいだろうからな。


 それに、わざわざ俺を守ってくれる人なんだ。その人に冷たくするなんて、論外だよな。仕事という面で見ても、仲良くなっておいた方が良いだろう。


 早ければ明日か。待ち遠しいような気がするな。どんな人なのか、期待しておこう。


「さて、高校も警護官も決まったな。ありがとう、母さん。それなりに手間だったろうに」

「とばり君のためなんだから、当たり前よ。お母さんだもの。いくらでも、頼ってくれて良いんだからね」

「頼りすぎないように、気をつけるよ。甘えだしたら、転げ落ちそうな気がするからな」

「いくら転げていっても、とばり君は大切な子であることに変わりないわ。だから、安心していいのよ」


 母さんのセリフはありがたいが、俺としては、せっかくの健康な人生なんだから、ある程度は頑張っていきたい。


 ということで、今のところは軽く甘えるだけで押さえておこう。


「せっかくだから、抱きしめてもらって良いか?」

「もちろんよ。可愛い息子だもの」


 そう言って、母さんは抱きしめてくれる。りんごが俺に抱きしめてと言ってから、気になっていたんだよな。前にも抱きしめてもらったことはあるとはいえ。意識はしていなかったから。


 下手したらマザコンとか言われそうだが、前世では家族の顔を見る経験すら少なかった。だから、できるだけ親子らしいことはやってみたい。ちょっと、憧れていたところはあるからな。


「ありがとう。少し、落ち着けたよ」

「もしかしたら、新しい環境が不安だったのかも。また、何かあったらいつでも言ってね」


 さて、警護官がやって来て、その後は高校の面談かな。しっかりと気合を入れていこう。

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