第18話 絡んでくる我が弟エイジ

 金策のためのダンジョン【ゴールデン・フォレスト】にバンドムたちを連れて向かう前に、俺は一旦実家に帰っていた。というのも、バンドムたちをゾロゾロ引き連れてダンジョンに行ってしまうと、バンドムたちとつるんで金儲けしていたクソ貴族どもが絡んでくる可能性があったからだ。それを押さえつけるため、父にこちらから商談を持ちかけようという算段だった。


 バンドムたちには俺が帰ってきたらすぐに【ゴールデン・フォレスト】に行けるように【ワイバーンの天空世界】での周回方法を教え、レベリングをさせておき、その間に俺は領地へと帰宅した。ちなみにバンドムたちが俺より強くなれる可能性は万が一にもないので、反逆される恐れもない。俺が一週間で300レベルまで上げられたのは、偏に一万三千時間の廃人プレイのおかげだからだ。


 俺が実家に帰るとすぐにレイアが顔を見せに来た。どうやら何も言わずに何処かへ行ってしまった俺のことが心配だったらしい。リアプールに行っていたこと、そこでレベル上げをしたこと、バンドム組を傘下に加えたことをザッと伝える。レイアはそれを聞いて頭痛がするように頭を押させていた。


「……アレン様は手心という単語を知らないのですか?」

「知らん」

「そうですよね……。ええ、分かってましたとも。エイジ様にあんな仕打ちをし始めた時から気がついていましたとも」


 呆れたというか、諦めたような表情でレイアは言った。レイアの言葉に引かれるようにエイジも顔を出した。彼は相変わらずニマニマした笑みを浮かべて俺を小馬鹿にするように言った。


「おお、何か声がすると思えば我が落ちこぼれの兄、アレン兄さんじゃないか。どうしたんだい、父上に見捨てられて家出したと思ったら、また帰ってきた。やっぱり何処にも居場所がなくてこうして帰ってきたってわけかい? 情けないねぇ、アレン兄さんは。まあ、この家にも居場所なんてないから早く魔物に食われに行ったらどうだい? そこなら餌としての居場所を貰えるかもよ?」


 そう煽り散らしてくるエイジに俺は淡々と尋ねた。


「エイジ、お前、今レベルはいくつだ?」

「僕のレベルか? そんなの聞いてどうする?」

「いや、優秀らしい我が弟のレベルはさぞ凄いことになっているだろうと思って、気になってな」

「フンッ、そんなに気になるなら教えてやるよ。僕のレベルはこの間、87を超えたんだ! はははっ、兄さんには一生超えられないよ」


 ドヤ顔でそう言うエイジ。俺はそんな弟に小馬鹿にするように表情を浮かべ鼻で笑った。


「はっ、そうか、87か」


 その小馬鹿にした俺の態度が気に食わなかったのか、エイジは額に青筋を立てて言った。


「アレン兄さんはまだ力の差が分かっていないようだね。僕が今、分からせてあげてもいいんだよ?」

「……エイジ様、おやめください。屋敷を壊す気ですか? それにアレン様もエイジ様を煽るのはおやめください」


 エイジが襲いかかってこようとしたらレイアが止めに入った。エイジはまだレイアには勝てないから大人しくその注意を聞くしかない。エイジは不機嫌そうに鼻を鳴らして背を向けた。


「フンッ。今日のところは勘弁しておいてやる。だが、兄さん。次はないと思いなよ」


 そう気丈に振る舞うエイジを心の中であざ笑いながら俺は言った。


「おー、怖い怖い。仕方がないから、エイジのために気をつけておいてやるか」


 俺の言葉にエイジは何も言い返さずに足音を立てて何処かに行ってしまった。エイジが完全に見えなくなるとレイアが俺に言った。


「アレン様。言葉にはお気をつけください。まだエイジ様には勝てないのでしょう?」

「誰が勝てないと言った?」


 俺がそう言うとレイアの眉がピクリと動いた。


「どういうことです? レベリングしてきたとはいえ、流石に87レベルを超えていたりは……?」

「俺の今のレベルは300だ」


 レイアは思いきり目を見開く。そして震える声で言った。


「ほ、本当ですか……?」

「ああ。ステータス画面でも見るか?」

「……見せて貰っても?」


 レイアの言葉に頷いて、俺はステータス画面を表示させレイアの前にスワイプして送った。それを見て彼女は驚くように手を口に当てた。


「そ、そんな……こんな短時間で300レベルなんて……。もうA級冒険者レベルじゃないですか……」


 そう驚くレイアをよそに、俺はバンドム組に関する商談をしに、父のいるであろう執務室に向かうのだった。

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無能な悪役貴族はLv9999になりました〜効率厨がひたすら周回レベリングしていたらいつの間にか世界最強〜 AteRa @Ate_Ra

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