第15話 暇つぶしをしたい
と言うわけで、一週間でレベルを300まで上げることになったわけだが。竜人王バーラの経験値が一体で十万で、俺がレベル300まで上げるのに必要となる経験値は六千万。つまりバーラを600回倒すだけで達成してしまう。バーラを倒すのに五分ほどしか掛からないので、五〇時間ほどで終わりだ。一日十時間は潜るとして五日で終わってしまう。なのに何故俺が一週間もらったかというと、余裕を持たせたってのもあるが、一番は余った二つで他にやることを済ませておこうと思ったからだ。
今後の予定としては【ゴールデン・フォレスト】で金策をした後、【エリスの涙】を手に【迷宮都市アルカイア】に向かい探索者となるつもりだ。探索者になると冒険者ギルドが所有し管理しているダンジョン【アルカイア・タワー】に挑戦できる。そこで【エリスの涙】が必要となるわけだが、それと同時に【称号:ダンジョンに住う者】という称号も必要になってくる。これはステータスに付与される称号で【称号紋章】とはまた違うものだ。称号は様々な効果を持ち、この称号の効果が【アルカイア・タワー】に挑む時に必要となってくるのだった。
そして【称号:ダンジョンに住う者】の称号を手に入れるには、ダンジョンに五十時間滞在する必要がある。効率を考えた結果、バンドムたちを引き連れて【ゴールデン・フォレスト】に向かう前にこの称号を手に入れておいたほうがいいと考えた。おそらく【ゴールデン・フォレスト】にそこまで滞在する時間はないからな。チャート的には今しかない。なので、俺は五日間かけてレベルを速攻で300まで上げると、【ワイバーンの天空世界】に丸二日籠ることになった。
と言ってもその間、特にやることもない。バーラを倒してしまうと強制的にダンジョンから退出してしまうし、そこらのワイバーンたちをボコボコにしても経験値的には誤差だ。チャートには影響しない。と言うわけで暇つぶしに白百合騎士団の女——エリカを連れてきた。
「私は暇つぶし相手か、そうか……」
俺がそう説明するとずうんと落ち込んだ様子でエリカは言った。どうせエリカも状況が動くまで暇だっただろうし、俺の温情に感謝してほしいのだが。まあ、感謝されてもどうってことはないけどね。正直感謝されようがされまいがどちらでも構わない。エリカは心底興味なさそうな俺を見て、呆れたようにため息をついた。
「はあ……ここまで狂った子供だったなんて誰が想像できるだろうか?」
「狂ったとは何だ、失礼だな」
「いや狂っているだろう。一日十時間もダンジョンに繰り返し潜ってレベル300を達成したと思ったら、今度は五十時間潜り続けるから暇つぶしの相手になれって? 頭おかしいのか?」
失敬な。頭おかしくはないぞ。これが普通だ。そう思ったがどうせ理解されないとも思ったので俺は早速暇つぶしの遊びを提案することにした。
「まあ俺のことはどうでもいい。今はこの五十時間をどう潰すかってことだ」
「……それはそうだな。で、どうするつもりなんだ?」
その問いに俺はニヤリと笑みを浮かべるとエリカの腰をガッチリと掴んだ。
「何を……?」
そう困惑するエリカを抱えて、俺は外壁に這うように取り付けられている階段に出ると、下に飛んでいるワイバーンの一体に向かって全速力で飛び降りるのだった。
「いっ、いきなり何をするんだあぁあああああああああああぁあああああ!」
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