異聞帯よりあなたへ

讃岐うどん

プロローグ


どこかで、鐘がなる。

かーん、かーんって。

チャイムみたいに時間を告げる。


どこかで花が咲いた。

赤いバラが、赤いチューリップが。

たくさん咲いて、みんなが笑った。


楽しそうに、嬉しそうに、子どもたちが声を上げる。

笑って、泣いて。裸足でいることすら忘れて。

毎日、花が咲く。


動物さんも、一緒。

みんなが皆んな、声を出す。

笑って、泣いて。


鐘は毎日2回なる。

始まりを告げる鐘と、折り返しを告げる鐘。

鐘が鳴ると、花が咲く。

赤く、赤く染まった緋色の花。




私はここで育った。

みんなの笑顔によって彩られたところで。


────鐘が鳴ると花が咲くのか知っている。


かーん、かーん、また鐘がなった。


何処かで声が聞こえる。

皆んな、暗い顔をしていた。


バン!


私の目の前でヒトが爆発した。

風船が破裂したような、チープな音が聞こえた。


漂っている血の匂い。


頭が破裂して、首から下が倒れた。


地面が血を吸う。

そこから、白い花が咲いた。

死体に絡みつくように茎が伸びる。


花が血を吸う。

赤く染まった花が咲き誇る。


この光景を何度も見た。

私の目の前で、みんな死んだ。


だから、私は知っている。

なんで、鐘がなると花が咲くのか。


────ヒトの血で育った死の花が。


私の周りで、咲き誇る。


誰かが言った、私は「死神」だって。




みんな、鐘がなるのを恐れている。

みんな、鐘に選ばれているのを恐れている。


みんな、泣いている。

誰も、笑っていない。


こんな現実、見たくなかった。


目を背けて、私は歩き出す。

鐘を止めるために。

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