第3話 彩
「これ……」
それは、家だった。
ちょっとボロめで、小さい。
けど、何処かで見たことがあった。
初めて来た場所なのに。
彼は私のほうを振り向き、両手をパッと広げた。
それと同時にかーん、かーんと、鐘が鳴った。
「日付が変わってしまったか……まあ、いいだろ」
彼はそう呟いて家へと入っていった。
私も彼の後についていった。
「なに……これ」
無造作に置かれた試験管。
中には緑色の液体。
奥に進んで、部屋に入った。
小さなベッドが二つ。
私がベッドに座ると、彼は私の手を握った。
黒いイバラが出て、彼の腕にまとわりつく。
また、針が出て彼の腕を刺した。
「───
臆することなく冷静に彼は呟く。
それが何を意味するのか、私にはわからなかった。
「……ッ!!」
突如、全身に激痛が走った。
イバラが萎んでいく。
「……なにを、したの」
飛びそうな意識の中で私は彼に問う。
「一時的にお前の魔力の流れを切った。応急処置ではあるが、3日は持ってくれるだろう」
「?」
私の理解が追いつかない。
「簡単に言えば、しばらくはそれが出てこなくなるってことだ」
そういえば、彼は私に触れていた。
なのに、イバラが出てこない。
萎んで、色が無くなった。
プツンと、電源が切れた。
気づけば視界が暗くなっていた。
何も無い世界で、私の身体だけがある。
虚無を、私は進む。
何処に向かっているのか、
何があるのか、
自分ですら分からない。
しばらく歩いて、光が見えてきた。
遠くに、巨大な建物が見えてきた。
それは、美術館だった。
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