第2話 ベルク


私の動揺とは裏腹に、彼は冷静に私の手から出たイバラを見ていた。


「……敵意があるわけではない。魔力の流れを感じなかった。まさか、無意識か?」


ぶつぶつと独り言を言う少年。

私の身体から出た黒いイバラ。

全身を囲むように、守るように漂い続けている。

少年が一歩引くと、イバラも私の体の中に収まっていった。


「俺はベルクだ。お前の名前を聞きたい」


ベルクと名乗った少年はただ、私の身体から出た異物を見ていた。


「……リベラ」


少し、安心して名前で答える。

彼と距離を取って私は立ち上がった。


かーん、かーん、また、鐘がなった。


「あ……」


私は無意識で理解した。

次に、誰が選ばれるのか。

目を瞑って時間が過ぎるのを待つ。


「……なんともないな、ほら、行くぞ」


目を瞑っていた私の手を引っ張るリベラ。

イバラが、彼の腕を刺す。


穴が空いて、血が出た。

少し引き攣った顔をして、私が歩き出したのを確認し、手を離した。


「……どこに?」

「家」

「ナンパ?」

「いやいや」


ここに居続けるわけにはいけない。

それは、重々承知していた。


限界の肉体に、大量の睡魔が襲う。


「とりあえず、だ。流石に野宿は見過ごせん」


襲われたとしてもイバラがなんとかしてくれるだろう。

そう考えて、私は彼について行くことにした。


方角は北。

私の目標的にどの道、通らなければいけなかった。


距離を空けながら二人で歩く。


───何故、彼は鐘に選ばれなかったのか


───何故、私の中から異物が出たのか


考えるべきことが沢山あった。

その中でもとりわけこの二つの事柄が私の頭を支配する。


「そういえば、どれぐらいあるくの?」


肝心なことを聞き忘れていた。


「さぁな。ざっと8時間で着くんじゃないかな」


長過ぎる。驚いたというより、呆れてしまった。


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