第5話 剥がれ落ちたもの①


彼が見せたもの。

それは、一本の映画だった。

映画館の真ん中に私を座らせ、彼も隣へ。


薄暗くて気味が悪い。

目の前には巨大なモニター。


「では、揃ったのでこれより上映を始めましょう。あ、ポップコーンは無いので悪しからず」


少年は少し嬉しそうに、始まりを告げる。


周りの電気が消され、上映が始まった。


タイトルは『異界の記憶』。

フィルムが流れて、映像が動き出す。


『始まりは、私からだった。

全部、私のせい』


なんとなく予想はいていた。

やっぱり、私の声。


真紅の樹海。

この世界の何処か。


一人称視点で話が進んでいく。

主人公はジメジメした地面に座り込んでいた。

その手は汚れていて、赤く染まっていた。


バン!


大きな爆発音。烈火が樹海を焼き尽くす。


『あぁぁぁぁぁあああ!!』


身体が、燃えていた。

視界が、緋色に呑まれる。


燃えて、焼いてもえて壊してもえて


『私は逃げた。自分の責務から。自分の運命から』


ナレーションの声が響き、映像がパッと切り替わる。


刀を持った青年が、コチラを見ている。

主人公の腕に、無数の切り傷。

どうやら、戦っているらしい。


主人公の腕から出る、黒いイバラ。

イバラを器用に動かし、刀を封じ込める。


突如、映像にノイズが走った。

元に戻ったとき、主人公の腹に刀が刺さっていた。

イバラがボロボロになって朽ちて行く。


『これは、私のせいじゃない。

私は知らない。私は悪くない。

そう、自分に言い聞かせ、逃げ続けた』


また、映像が切り替わる。


「うーん。良い、自作した映画というのもありますが、やはりというものは美しい」


隣でくつろぎ、飲み物を飲む少年。


「私の方を見てないで、映像に集中してください。せっかく、私が丹精込めて作ったのですから。しっかり、感想を言ってもらわなければ」


バン!バン!バン!


繰り返される爆発。

赤い爆発。蒼い爆発。緑の爆発。

まるで花火のようで、綺麗だった。


爆発の中心にいなければ、そう思えたのだろう。


全身に金属の破片が刺さる。

傷つけて、切り裂いて。


『あぁぁあぁぁぁ!!」


繰り返される悲鳴。



「……ッ」


妙に、生々しい。

吐き気がしてくる。

見るのをやめて、少年の方を向く。


少年は笑っていた。

ただ、楽しんで。


音と声は私の意思に反して続いて行く。

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