第6話 剥がれ落ちたもの②


ケガレて。

泥が、身体を飲み込んで。


壊れて。

全身の骨を砕かれて。


その度に、映像が切り替わる。

死んで、死んで、死んで、死んだ。


数えるのも億劫になる程死んだ。


スタッフロールが流れ「fin」の文字が浮かんだ。


『247分の147回、の死因。

残りの100回は、死ぬよりも最悪。

だって、死は不可抗力だから

ソレ以外は


「……ッ!!」


頭がガンガンして、気持ち悪くなってくる。

吐き気と頭痛が交互に襲う。

知らない記憶が、

懐かしい記憶が、

忙しなく、雪崩れ込んでくる。

青ざめた表情を見て、少年は口を開く。


「さて、思い出しましたか?

ああいや、その表情、聞くまでもないですね」


少年はニヤニヤしながら、私を見つめる。


「まあ、貴方が私のことを思い出したとして、目覚めれば全て忘れるでしょう」


全部分かった上で少年は話を続ける。


「なにせ、ここで起きたことは夢。

私はただ、貴方の記憶を貴方に見せただけ」

「ね、?」

「……」


神様。彼はそれだけ言って立ち上がった。

私は何も、答えることができない。


「では、もし貴方が挫けず旅を続けるとしたら、私から忠告を。

軍神アレス豊穣神ユピテル

彼らだけは絶対に信じないでください」


簡単に告げられる神の名。

全てを知った今、驚く必要は無い。

少年は淡々と告げる。


「いえ、豊穣神ユピテルはまだ良いです。貴方の在り方が気に食わないだけですから。その気になったら協力してくれます。

最も危険なのは軍神アレスです。

彼は善意で貴方を助けるでしょう。

ですが、それは必ずしも良いものとは限りません。


長くなりましたが、これだけは気合いで覚えていてください。

いえ、引っ張り出してください」


それだけ言って少年は消えていった。

一人残された美術館を私は歩く。



────おい!


どこからか聞こえる遠い声。

気がつけば、私はベッドに横になっていた。

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