第7話 カタチあるもの
「酷く、うなされていたぞ」
ベルクが優しく私に話しかける。
なにも、思い出せない。
頭痛がひどくて、今にも吐きそうだ。
「……もう、大丈夫」
それだけ言って、立ち上がった。
「……ッ」
頭痛が止まない。
頭の中に浮かぶ「
聞いたことない言葉が、私の頭を支配する。
「……君はさ、アレスって聞いたことある?」
疑問を、ベルクにぶつける。
少年は首を傾げて、ベッドから立ち上がる。
「いや、知らないな。けど、多分ライト爺さんなら知っているかも」
「ライト爺さん?」
「北の方に森があるだろ?その中心で暮らしてるのがライト爺さんだ」
ベルクは歩き出して、部屋を出た。
鐘が鳴ったのと同時に私も、部屋を出た。
「……え」
星が、赤く光っている。
燃えているような、
叫んでいるような。
関係無く、空は輝いている。
ベルクの隣で私は歩き出す。
イバラはもう、出てこない。
「……神様か」
ふと、彼が呟いた。
「軍神は知らんが、別の神なら見たことがある。いや、見たと言うより、遭遇したと言うべきか」
「え」
私たちは足を止めて、座り込んだ。
「俺の故郷、サルディアって言うんだけどな。そこではな、二人の神を崇拝していたんだ。
神様は優しくて、子供の俺たちといつも遊んでくれた。
大人たちが忙しい時、神様は仕事を手伝ってくれた。
親近感、そう言うべきなのかな」
星を見て、ベルクは話を続ける。
「けど、それも長くは続かなかったけどな。
ある時、別の神がやってきたんだ。
そいつはこう言った。『人が、笑うことなど許されない』と」
「……」
黙って私は話を聞く。
かーん、かーん、と。
静寂を打ち壊す鐘の音。
「……いいや」
「え?」
急に彼は話をやめ、立ち上がった。
「それ以上は、言って虚しくなるだけだし、 聞いたところで、だよな。
すまんかった」
そう言って、彼はまた歩き出した。
どれぐらい歩いたのだろうか。
鐘が5回ぐらいなってから、数えていない。
ようやく、森が見えてきた。
「……ッ!!」
痛い。
「着いたぞ」
苦しい。
「……どうした?」
鼓動が止まらない。
胸が張り裂けそうだ。
知らない場所。初めての場所の筈なのに。
私の本能はここが、危険だと言っている。
頭痛で、頭が割れそうだ。
「……大丈夫」
そう言って、私たちは森の中へと足を踏み入れた。
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