第8話 ライト


神。

それだけを信じて、歩き出した。

いつか、会えると信じて。

いつか、■■■■■と信じて。


果てに、彼は辿り着く。

弱っちぃ神に。

逃げてばかりの神。




「……ッ!」


森の中を進む。

頭痛が更にひどくなる。

森は薄暗くて、どこか寂しかった。

正直、ベルクが居なければすぐ迷子にでもなっただろう。


ベルクの後をついていき、ようやく、小さな家が見えてきた。

彼の家と違って綺麗で、細部にまで掃除が施されていた。


「───着いたぞ……お前、大丈夫か?」


彼は後ろを振り向き、私の心配をする。

鏡のような水たまりを見る。

どうやら、顔が青く染まっていた。


「……大丈夫、だと思う……」


不安げに答える。


「……」


彼は私を見つめると、家の中へと入っていった。

何も考えることができない。

私はただ、着いて行くことにした。


「……え」


それは、製鉄所と呼ばれる場所だった。

生活感は一切ない。

そもそも、暑すぎる。

さっきから汗が止まらない。


「!」


かーん、かーん。

鐘の音じゃない、何かを叩く音。

奥から響いて私の耳に。


「行くぞ」


彼に次いで私も奥へと進んだ。


「暑い……」


やっぱり、汗が止まらない。

と言うか、酷くなってきている。

かーん、かーんと、甲高い音が響く。

ぼうぼうと燃え続ける火。


中心で男がハンマーを持つ。

手元には赤く染まった金属。

かーん。かーん。

何度も、何度も金属へ打ちつける。

気づけば薄い縦長になって、剣の形になった。

打って、打って、打って、打った。


男はこちらに気づくことなく、金属を水に漬ける。

ジュウゥゥと、音を立てて蒸発した。


「……イバラか」

「!」


男はこちらを向かず、淡々と作業を続ける。


「……悪いが、もう少し待て。材料の発注が遅れた」


それは、誰に言ったのだろうか。


「……後どれぐらいだ」


ベルクが口を開いた。


「鐘がなるのか先かどうかだな」


男は答えると、またハンマーで金属を打ちつける。

ベルクは私の手を引いて外へ出た。


「……お前、旅続けるんだろう?」

「え」


答えを出すよりも先に、彼は言葉を続ける。


「神を探すんだろ。鐘を鳴らすんだろ」


事実だけを告げられる。


「うん」


私はソレしか言えなかった。


「俺もついていく」

「!」


予想外の言葉に、硬直すら覚えた。


「神の力は異常だ。話し合いが通用しない奴もいる。イバラがどれだけ強かろうと、関係無い。

だから、武器がいるだろう?」


彼は笑って森の外へと向かって歩き出す。


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