第五話 過去

「あっ、ええっと」


「昨日のこと、覚えてない?」


 宴会に行って号泣したところまでは覚えているが、その後の記憶がない。


「その感じだと、無さそうだね。」


「えぇっと、ごめん。」


「いいよ、私も同意したし。」


 気まずい。何を話せばいいのかわからない。


「あの。ここってどこ…」


「私の家。」


 …もっときまずい。


「あの、どうしてこんなことに」


「久しぶりって話になって、酔って帰れなくなったあなたを私が送ることになった。でも、よくよく考えるとあなたの家なんてわかんなくて、だから私の家に招いた。」


 送られ狼になったってことか?あれ?


「久しぶり?」


「忘れたの?」


 ジト目で見つめられた。


「早川」


!?


 一人心当たりがあった。早川華憐、中学の頃の同級生でオタグルの一人だった。ただ、


「イメチェンしたんだね」


 あの時の彼女はギャルって感じだった。髪は染めてたし、ネイルはバチバチに決まってたし、制服も着崩していた。


「親が再婚してから…」


 地雷踏んだかもしれない。


「君のこと、元々好きだったんだけど、君に彼女も居たし諦めてたんだ。だけど、浮気されてたしキスもまだだったって聞いて、嬉しくなっちゃって、ふざけて煽ったら食べられちゃった。」


 唐突な告白に、混乱する。


「これからどうする?」


「え?」


「これからの関係。私の気持ちは、あなたを罵ってない時点でわかるでしょ?あなたはどうしたい?これから私たちは同じチームになる。仲良くしとかないとダメでしょ?」


「う…ん…」


 自分の気持ちなんてわからない。川原…早川?華憐?まぁいいや、彼女に対する気持ちはなんなんだろう。ただ、責任はわかる。


「とりあえず、仮でもいいから付き合わない?」


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川原華憐視点


 ふっふっふっふ…


「スゥー、スゥー」


 隣で寝ている康君を見て心の中で高笑いする。中学の頃から、男の私に対する感情は基本、肉欲による物だった。私は割りとかわいい。ただコミュニケーション能力はあったから、いじめに会うようなことはなかった。


 オタク趣味がある私はオタグルに入っていたからと言うのもあるかも知らないが。


 私以外のオタグルに所属していた人達に私は姫みたいに扱われた。私は驕っていたし、気持ちよかった。みかえりとして、私はオタ達におしゃれの方法を教えていた。


 皆、清潔感が出て少しモテるようになったが、特に変わったのは眼鏡君だった。元々清潔感はあってかわいい感じに仕上がってたのがかっこよくなった。


 モテるようになったオタグル男子から、何回か告白されたが、推しを引き合いに出して黙らせた。告白しなかった男子も私に見とれていた。眼鏡君を除いて。


 眼鏡君は華麗という彼女がいたからか、私に欲情した視線を向けなかった。完全に友達として扱ってくれた。それがなんか嬉しかった。


 そんな日々も、卒業式で別れを向かえた。


 他の子達は打ち上げに行ったり告白したりしているが、私は急いで病院に向かった。


 卒業式に向かう途中に、父が通り魔に刺されたというのだ。


 走って走って、電車に乗って…


「残念ですが…」


 父の死には間に合わなかった。犯人はまだ捕まっていないらしかった。


 涙は出なかった。悲しくはあったが、


「ありがとう、お父さん。」


 感じたのは感謝と


「許さない」


 憎悪だった。


<吐血毒>


 星読みなった私に与えられた能力は毒を操ることであった。対象を父殺しの実行犯と計画犯にすると、


「カハッ」


 母が血を吐いた。父と母の仲が悪かったのも、母が浮気をしていたのも知っていたが、まさか父を殺すまで恨んでいたとは思わなかった。


 病院だったのですぐに医者が来たが、致死量にまで毒を増やして私は安置所を後にした。


 父は殺され、母は殺した。祖父母は両家ともに死んでいるので、私は天涯孤独になった。これからどうしようか悩んでいたとき


「うちに来ない?厚待遇で向かえてあげるわよ。」


 スーツ姿のオールバックなイケメンが声をかけてきた。


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「これからよろしく!」


 オフィユカスさんは話せる人だった。


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 ハイパーノヴァに入って二年が経った。恋人が欲しいとか下らないことを考えていたら


「星野康一です。牡羊座タウルスを司っていると思っていたら牡羊座アリエスだったらしいです。スカウトされました。これからよろしくお願いします。」


 ドキッてとした。なんか、眼鏡君いるんだけど!?コンタクト外して余計イケメンになってるし!


「よし、自己紹介も終わったことだし宴会に行こうか!」


 これでお近づきになれないかな?


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「うぅっ、どうせ俺なんて…俺なんてぇぇ」


 お酒を飲んだ眼鏡君は泣くのが加速した。一杯だけなのにこんなに酔うんだとか考えてたら


「うぅぅぅ」


 うとうとし始めた。


「スコちゃん、友達なんでしょ?家まで送ってあげたら?」


 ナイスサジさん。


「わかりました。」


 そう言って、私は眼鏡君を負ぶった。


 顔を視ると、眼鏡をしなくなった眼鏡君はかっこいいなとか思って心がポカポカした。この人今フリーなんだとか考えてたら疼いてきた。


「あれ?」


 私は眼鏡君の家を知らない。ある程度仲がよかったとは言え、家まで上がれるような関係ではない。


 とりあえず、持ち帰った。ベッドに眼鏡君を置いたタイミングで


「うっ」


 眼鏡君が目を覚ました。


「康一君、久しぶり。」


「その呼び方は早川?」


「うん、そうだよ。」


 なんかムラついてきた。


「よいしょ!」


 眼鏡君の隣に飛び込む。服を脱いで下着だけの状態だ。酔いのせいもあるだろうが、眼鏡君のズボンにはテントが張ってあった。


「あれぇ、これはなにかな?」


 眼鏡君を煽る。ラブコメだとキスされるフレーズだ。


「そんなこと言うってことはそういうことだな」


 そう言って、眼鏡君はズボンとパンツを下ろした。


 そして、覆い被さってきた。


「許さない」


 あっ、ヤバい。煽りすぎたかも。


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 朝チュンした。割りと充実感がある。お腹に少し違和感があるが大したものではない。


 横を視ると、コンタクト眼鏡君が綺麗な寝息をしていた。かわいいなとか、思いながら眺めてたら目を覚ました。


「……おはよう。」


 眼鏡君の顔が青ざめた。


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ようやくラブコメの土台が完成したかなと思います。

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