第24話 スマホが届いた
「
「!! え!? お父さんそれ本当!? 今すぐ取りに行こうよ!」
「明日じゃダメか?」
「明日じゃダメ! 今すぐ行こうよ!」
今年の4月頭に高校進学祝いとして予約はしたものの、高校生の間で人気機種であるのに加え、
いまだ続く世界的な半導体不足で「納期未定」となっていた品がようやく届いたのだ。
凛香は明日まで待つことが出来ずに、早速ケータイショップに行こうと父親である
平日の学校が終わったばかりの時間帯だったこともあってか客は少なく、10分も待たずに凛香の順番がやってきた。
これが午後5時以降だったり休日だったら大人が押し寄せてきて軽く1時間以上、場合によっては2時間以上待つ羽目になっただろう。
「では料金プランの変更についてのお話をさせていただきますね」
ケータイショップの店員から凛香と栄一郎は眠くなりそうな説明を聞いていた。キッズケータイのプランはスマホの物とは別物であり、契約プランの変更が必要なのだ。
幸い今まで使ってたキッズケータイとこれから使うスマホのキャリアは同じだったため、データの引継ぎやプランの変更も特にトラブルなくすんなりと終わり、
晴れて凛香の手には待望のスマホが握られることとなった。
「やっとスマホが……もうキッズケータイじゃないのね!」
欲しかったスマホがやっと自分の物になった事に、凛香は童心に帰ったかのように目をキラキラと輝かせてた。
ここまで嬉しかったことなんて彼女の人生の中ではそうそうなく、間違いなく「人生を左右する程」の大きな出来事だった。
「やっぱり嬉しいか? 俺も会社員時代に社員用携帯を渡された時は「やっと自分の実力が認められた」って思えて嬉しかったよなぁ」
「へぇ。お父さんは会社勤めしてた時もあった、って聞いてたけど結構出世したのね」
「出世したかどうかはわからんが少なくとも林太郎と逃げられた嫁を養えるくらいの稼ぎはあったな」
凛香は帰り道、父親が運転する車の助手席に乗ってそんな話をしていた。憧れのスマホが手に入り上機嫌で、いつも以上に父親とおしゃべりをしていた。
彼女が自宅に帰ってくると、まもなく林太郎も帰って来た。
「ただいま」
「あーら林太郎じゃない。調子はどお?」
「!? な……なぁオヤジ。凛香に何かあったのか? 変な物食っておかしくなったとかじゃねえだろうな?」
林太郎は調子外れでやたらと「ハイ」な凛香の立ち振る舞いにある種の不気味さすら抱きながらも彼女のそばにいた父親に聞く。
今までの彼女が壊れる程に何かとんでもない事でも起きてしまったのでは? と彼は少し心配だ。
「安心しろ。念願のスマホが手に入ったんでやたらと機嫌がいいだけだ」
父親のその一言に息子は納得した。なるほどそういう事か。
「へぇスマホか。そういやこの家じゃ高校に上がるまでキッズケータイしか持てなかったと聞いていたけど。まぁいいや電話番号教えようか?」
「良いわよ。今日の私は機嫌がいいから特別にしてあげる。感謝しなさいよ」
「何だその上から目線は……まぁいいや」
普段の彼女では考えられない程の上機嫌だったのか、電話番号の交換に珍しく応じてくれた。ほんの数分で終わり、お互いのスマホに連絡先を登録する。
「でもソシャゲのガチャは回せないしSNSも利用制限されてたりと、ペアレンタルコントロールはとんでもない事になってるから覚悟しとけよ。俺のスマホがそうだもん」
「これからはクラスメートの電話番号がいくらでも登録できるし、それくらい大したことないわ。じゃっ、今日の夕飯は奮発するから待っててねー」
そう言って珍しく夕食を作る父親の手伝いをするため台所に向かった。
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