第13話 恋をしたのかな
「……」
雪はパソコンを持っておらず、WEBに接続できないキッズケータイしか持っていなかったため、WEBに接続するにも一苦労。時々姉である姫のパソコンを借りて見ていたのだ。
どうやら姉は「高校生になってもキッズケータイのままで良いからパソコンが欲しい」と交渉して中1の頃に買ってもらったらしい。
「雪ってば最近恋愛ものの小説やマンガを見てるよね? そういうお年頃かしら? 甘酸っぱくていいわねぇ」
「うん。恋愛小説に出てくるほど華麗じゃないですけど、ヒロインの気持ちから言ったらこれが恋かな? っていうのはありますね。まぁ、叶わない恋だとは思いますけど」
姫は赤い縁のメガネのズレを直しながらマンガを見ている妹を後ろから見ながらニヤニヤしつつ見守っていた。
WEB小説界隈では恋愛ものは今が旬と言って良く、とにかく量が多い。どういうわけか婚約破棄されたり悪役令嬢がかなり多いのだが。
もっとも、タダで見れるのだから文句は言えないのだが。
「あ~~~~~っ! 分かるそれ! 甘酸っぱい恋の味! お姉ちゃんも昔は白馬の王子様にさらって欲しいって思ってたピュアな時もあるから分かるわそれー。
叶わない恋って言ったけどもしかして転校したクラスメートや高校に進学した先輩相手とか?」
「!! ね、姉さん勘が鋭いですね。そうです、相手は高校に通っていますよ」
「あらそう! 学校での接点がないのは結構厳しいわね。何だったらお姉ちゃんが彼氏の家の住所やスマホの番号探してあげようかしら?」
前髪に隠れて見えない姉の瞳が、ちょっとだけ光った気がする。
「い、いえ。そこまでやらなくても良いですよ。ハッカーじゃないんですし」
詳しい話は聞いてないが、噂では「当時中学1年生だった頃に当時3年生だった先輩相手に何かとんでもない事をした」らしい姉の提案を断る。
姫はそのエピソードのせいで学校では「
「姫姉さんも恋とかしてます?」
「そりゃあいっぱいあるわよ「マフィアの国のアリス」の帽子屋とか「オズファミリー」のライオンとか……」
「ゲームのキャラクターじゃないですかそれ……生身の人間相手はいないんですか?」
「ん~……1人いるね。いつか絶対落として見せるって思ってる」
「!! そ、そうなんですか……良かった。てっきり生身の人間には一切興味ない人だと思ってましたから」
本人が言うには「5歳の頃から既にオタクだった」と名乗る姫の事だ。生身の人間には興味が無いと思っていたが、意外な回答が返って来た。
「あー……やっぱりそう思っちゃう? 特にお姉ちゃんが小さい頃からオタクだった。って話を雪ちゃんも聞いていただろうし、まぁそう思われても仕方ないわね。
言っとくけどお姉ちゃんだって生身の人に恋をしたことなんて1度や2度じゃないわよ? 昔はテレビに出てくるタレントやアイドルに恋したこともあったくらいだからね」
続けて出た言葉に雪は姉に随分と親近感を覚えた。てっきりアニメやゲームのキャラにしか恋できないと偏見に近い事を思ってて、
意外にもそれが外れたことに彼女もまともな恋をしていたんだなと大いに安堵し、小さく反省していた。
「雪ちゃん、あんたまだ12歳なんだし、叶わぬ恋だなんて思わないでガンガンアタックしていきなさいね! 高校生の彼氏にもどんどんアピールしなさいね。今は女の方から言い寄る時代なんだから」
「は、はい。アドバイスありがとうございます。姫姉さんの恋もかなうといいですね」
「あら、応援してくれているの? アリガトね! じゃあそろそろ雪は寝る時間じゃないの? お母さんに怒られない内に戻りなさいね」
「うん。ありがとうね」
この時点では2人はお互いに「誰に恋したか?」を知らない。
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