第23話 絶対敵に回してはいけない相手
「ねぇ聞いた? 3年の
その成果として6月の今ではすっかり1年生の中にも浸透しきった話となっていた。
「聞いた聞いた。3年の姫先輩の話でしょ?」
「聞いた話じゃ何でも姫先輩が1年の時に当時3年だった先輩の高校入試を台無しにしたとか……」
「あーそれそれ。妹さんの霧亜や雪には絶対に手を出したりしない事、いいわね?」
「うん。彼女は
その噂は雪の耳にも聞こえていた。彼女は昼休みの時に校舎の3階、3年生の教室がある場所へと向かう。目的はもちろん、姉の姫に関する噂話についてだ。
「姫姉さん、妙な噂話が立ってるけど良いんでしょうか? それと、何で隠したんですか? 中学に上がるまで、あんな話聞いたこともありませんでしたよ?」
今年、中1になったばかりの雪が昼休みの間に姉の所属する教室にやって来て姫に関する噂話について聞く。
家じゃこんなこと誰にも言って無かったし、霧亜姉さんも特に言って無かった。わざと隠していたのか?
ボリュームのある前髪で瞳が完全に隠れているヘアースタイルをした姉に問う。
「隠したのは悪かったと思ってるわ。霧亜にも黙ってて、って口止めしてたし。
ほら、素敵な中学生活を送る上では要らない情報じゃない。ほのぼの生活を送る農場ゲームに家畜の
「それに?」
「私の目が黒いうちはスクールカースト下層の霧亜や雪には絶対に手出しさせないんだから。そのためなら噂の1つや2つ流されても何とも思わないわ。
雪、あんたの中学生活の少なくとも1年間はあたしが守ってあげる。もちろん霧亜の事もね。それのためなら恐れられることなんて大したことないわ。
うちの家族は義理の家族だけど一応は大切な妹なんだから」
「姫姉さん……」
家ではしょっちゅうオタクネタをまき散らす、ゲームやアニメやマンガにどっぷりと浸かっている姉であったが、こういう時はとても頼りになった。
「あたしら血の繋がりこそ無いけど家族でしょ? マフィアだって血こそ繋がってないけど仲間の事を
まぁマフィアを例に出すのは良いか悪いかは置いといて、だけど」
「ま、マフィアですか……あ、もしかしたら霧亜姉さんがマフィア物の乙女ゲームにハマってるのって、姫姉さん経由ですか?」
「そうよ。あたしも遊ぶから2人してお金を出し合って買ってるのよ。あそこまで沼にハマるとは思って無かったけど。深いからねーあの界隈は」
「は、はぁ……」
そう言ってカラカラと陽気に笑う姉を見て雪は、前だったらただのオタク程度にしか見ていなかったのだが改めなくては。と思ったのは誰にも内緒である。
「あ、そうそう。今日は金曜だから図書委員の仕事があって帰るの遅くなるんだっけ?」
「え、ええそうです。帰る時間は姉さんの部活が終わるのと同じくらいになりますね」
「ふーん、そうか。だったら一緒に帰らない? 2年前から通う学校が違くなったら2人きりで話す機会が少なくなったし」
「あ、はい。ご一緒しますよ」
姫が中学校に上がってから一緒にいる時間が減ったのか同じ小学校に通っていたころと比べれば会話する機会は減っていた。せっかくだし誘いに乗っても良いかと軽い気持ちで承諾した。
この後姉による濃厚なオタクトークをされるのを知らずに。
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