第29話 思った通りに事は進まないんだよね

 舞と正式にパーティを組むに当たって、俺の秘密を話しておこうと思った。

 今更だが、もう知らないすれ違いで失敗するのはごめんだったからだ。


 今までの経緯を話す。ガチャでRに偽装されたSSR雷の装備セットを手に入れたこと、UR幸運のネックレスを手に入れてレイスを狩り続けていたこと、15層のイエティの洞窟で吸血鬼のボスと戦い、LR幸運のネックレスとUR男爵吸血鬼の指輪を手に入れたこと、ダンジョンにまつわるすべてのことだ。


 舞は黙って俺の話を聞いていた。


「……そういうことだったのね……道理で……」

「ってわけなんだけど、まあ全部信じろとは言わない、ただお前が思っているより俺は強いってこと。それだけは分かっておいてくれればいい」

「いえ、そうね……大体の話はわかったわ、それなら納得のいく部分もあるし」

「さあ俺はしゃべったぞ、お前も何か隠しているなら話してくれよ」


 そもそも発端となった俺のせいというのがそもそも分からないのだ。


「それは、詳細はやはりいえないわ、ただギリギリいえる範囲としては私がダンジョンの関係者だったってこと」

「え、お前冒険者じゃなくてダンジョン職員だったのか?ならなんで10層まで降りてきてたんだよ」

「だから、これ以上は機密だから言えないって、これでもギリギリなのよ」


 今俺たちは15層のイエティの洞窟にいる。雪の中を行軍するのは大変だったが、秘密の話をするのにいい場所が見つからなかったからだ。SRアイスゴーレムの靴を履いて出てくる敵をSSR雷の剣の雷撃で攻撃していく、舞を背負いながらだったので俺の背中から舞の魔法も飛んでくる。雷と水の合わさった雷撃によって敵は問題なく倒して行けた。


「ほら、このUR男爵吸血鬼の指輪を使うとこんなこともできるんだぜ」


 そう言って目の前で指輪を発動させる。牙が生え、背中から翼をはやし、更に霧化を行う。これ以上のない証明だった。


 イエティの洞窟の入口についた俺たちはその場に留まり、話を続けていた。

 舞曰くダンジョン関係者の中で、このイエティの洞窟については情報が上がっていないらしいとのこと。図らずもいい場所だったわけだ。

 

「そもそも15層の雪の中の探索はほとんど進んでいないわ、私がいたころだからもう半年以上前で情報の精度は古いけど。大体の冒険者は危険な雪の中を進むより、安全に敷かれた道を通って過ぎさるだけみたい」

「へえーもったいないな、ここならいいドロップも手に入るのに。でも奥の部屋はマジでやばかったぞ、宝箱開けてLR幸運のネックレスが出なかったら俺も死んでたかもしれん」

「ねえそのボス部屋ってもう出てこないの?私も行ってみたいんだけど」

「話聞いてた?マジやばいんだってそこ、そもそも俺も何回か行ってみたけどもう扉はなかったぞ」

「だってそんないいアイテムが出るなら欲しいじゃない、それにアンタと一緒なら問題ないでしょう」

「まあ行くだけなら行ってみてもいいけど」


 そう言ってイエティの洞窟の奥へと向かう。ついでにUR水魔法の杖を舞に渡す。さすがに受け取れないと言われたが、もう正式な仲間なんだし、これからもパーティーとして活動していくなら戦力の増強は欠かせない。俺はほかにも余ったSR装備を渡す。


「さすがにSSR装備は渡せるやつないけど、SR装備ならたくさんあるから」

「なんか悪いわね、早めに自力でSSR装備買って手に入れるわ」


 幸運のネックレスによるレアドロップ乱獲も考えたが、今後のことを考えて保留した。

 後衛に置くであろう舞のことを考えれば、いい武器さえあればその能力を充分に発揮できるという考えからだ。


 俺たちは道中現れるイエティを問答無用で倒し、キマリスと戦ったボス部屋へと向かった。

 扉の前につくと、前まで何もなかったのに扉が出現していた。

 初めてきた舞に反応したのだろうか。


「どうする?さっきも言ったけど何が出てくるかも分からない、最悪死ぬ可能性もあるぞ」

「そうね、アンタと一緒だとしてもこの装備じゃ防御力に不安が残るわ、今回は扉を開けて外から確認だけしましょう」


 一応と扉を開ける。奥には宝箱が見えた。


「当たりね、それじゃあ」


 舞が言い終わる前に何かに引っ張られるように部屋の中に吸い込まれる。


「舞!」


 俺も急いで部屋の中に入る。最悪なのは二人が分断されることだ。

 部屋に入ると中央に行く前に扉がバンと閉まる。

 しまった。開けた時点でもうだめなのかよ。


「いったぁ、あれ、私どうして部屋の中に……」

「部屋の中に吸い込まれたんだよ、なにかはわからないが引力みたいな感じで」


 未だ状況が掴めていない舞のそばに駆け寄り声を掛ける。


「ってことは、もしかしてボス出てくるの」

「多分な」


 前回と同じように上から敵らしきモンスターが降りてくる。男爵吸血鬼なら勝てない相手ではない。しかし降りてきたのは黄色いドラゴンだった。

 大きさは亀竜の5分の1程度だが、それでも巨大なことに変わりはない。


「最悪ね」

「全くだ」


 俺が舞とドラゴンの間に入る。UR、SSR装備に身を固め戦いの準備へと移る。

 舞のUR魔法の杖と合わせれば十分倒せるはずだ。

 15層のボスとの戦いが始まった。

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