第4話 幸運のネックレス

 初めてのガチャから一週間、俺は耐えた。ガチャの誘惑に。

 そしてスライムを狩り続けついに魔石(小)100個そろえることに成功した。Nスライムの剣がドロップした時は、Nとは言え新しいドロップにすごく興奮したものだ。

 そしてスライムを狩り続けて気付いたことがある。Nスライムの剣でスライムを攻撃して倒すと高確率でNスライムの剣が出ることだ。


 んっほぉおお、Nだけどレアっぽいものでたぁ!!

 あっふん。


 Nスライムの剣はその名前の通りスライムのような剣なので攻撃力が低い、あの錆びた剣よりも低いので相当な暇人じゃなければわざわざスライムの剣でスライムを倒したりはしないだろう。もしR,SRスライムの剣が出れば同じように出てくるのかな。まあ、ちまちまとしたスライム狩りはちょっと飽きてきたのでこれ以上考察は無意味だろう。

 

 俺はそんなことを素材買取場の受付と話しながら買取を行った。一週間で2万いったのでなかなかの稼ぎだ。しかしこれはあくまで副産物、俺が欲しいのはガチャだガチャガチャガチャ!!!

 早速10連ガチャに向かう。

 

「ただいま期間限定ガチャ実施中です~。通常のガチャをしたい人はこちらから、期間限定はこちらからお願いします」


 期間限定!?なんだそのそそる響きは、こうしちゃおれん、そっちにすべてぶっこむぞ。


 俺は受付の女性に魔石を渡し今回も目を閉じて祈る。SRは当然SSRこいSSRこいURもきていいぞ!!!!


 ぱぁっとガチャが光るとポンポンと次々にアイテムが出てきた、


 SSR雷の鎧 SSR雷の小手 SSR雷の兜 SSR雷の具足 SSR雷の剣 SSR雷の盾 SSR薬草(上) UR幸運のネックレス


 ……………


 あまりのSSRの多さに逆に冷静になる。

 え、なにこれ、怖い。どっきりか何かかな?


 なんかセット装備みたいに出てきたけどこれってバグってない?しかもUR幸運のネックレスってなんだよ。やばいじゃん、パチンコするとき付けたら当たりでまくりだろ。ほら受付のお姉さんも固まっちゃってるし、野次馬も固まってるし、あれもしかしてこれ時止まった?時間停止かな?そんな機能まで備わってるとか神かよ。


「神です」

「うわぁ!!」


 本当に時間停止していたのか周りは一切騒がない。目の前に分けのわからない発光した人間のようなものが出現したのにだ。


「あーえーっと今回排出率いじってたらちょっと失敗してて、それを君が手に入れちゃったから、ロールバックしていい? 意味わかる? 巻き戻したいんだけど」

「いやだめです、出たもんは出てるんで戻さないでください」

「あーやっぱだめだよね、一応許可制だからさ、ごめんね時間取らせて。あとこんなの他の人には見せられないんで、今回出たアイテムはRに見えるように偽装しておくから、騒ぎにはならないと思うよ」

「はあ、それはどうも」


 そういうと神と言ったやつは消え、あたりの喧騒が戻ってくる。


「うわ!全部Rだけど雷の装備セットとかやるじゃん」

「いやRがあれだけ出てるだけでもめっちゃラッキーだろ」

「俺も期間限定10連回すために今から潜ってくるわ」


 ほんとはSSRなんですけどね、まぁ見た目もRっぽいんでばれてない、しかしこれ換金できないなこれじゃぁ。


「おめでとうございます、セット装備はボーナスも付くので今後の活動に役に立つと思いますよ」

「ありがとうございます。これからも頑張りますね」


 微笑んだ緑髪の受付嬢からの賛美の言葉を受け取り、上機嫌になって帰路につく。


 今日は満足したのでパチンコ店には寄らなかった。明日は一気に下の階層まで行ってドロップアイテムと魔石貯めるぞー!







「はい、確認しました。スライムの剣で倒すと確かに今までより高い確率でスライムの剣がドロップします。はい、了解しました。監視を続けます。」


 短く切り揃えられた赤い髪をした女性が電話を切る。上司への報告だった。


「新庄誠か…、まだ2週間弱の新米冒険者なのにすごい成果、ガチャもセット装備を引き当てるし、幸運のネックレスなんて中々の運の持ち主らしいわね」


 スライムの剣はNドロップ品の中では高めに取引されている、その素材がスライムの液体よりも高性能だからだ。絶対数が少ないため研究は進んでいないが、今回のスライム剣量産方法が確立されれば研究は加速度的に進み、有益な情報が得られることだろう。

 

 モンスターの素材を使っての科学技術の融合は遅々として進んではいない。魔石をエネルギー源として活用する方法もロスが多く実用化には至っていない。ダンジョンが出現してから数年、各国家は総力を挙げて取り組んでいるが、ダンジョンの素材を活用した目ぼしい成果を挙げられずにいた。


 そんな中、あるダンジョンで出現したガチャというものは非常に効率のいいものだった。現状使い道の限定されている魔石を、何かしらのアイテムに交換することで各分野での研究が捗るようになった。ガチャはそれぞれの国や地域に複数個同時に発現したため、何らかの意思が働いているのではないかという話もでたが、憶測の域を出てはいない。


「果たしてガチャは福音か、破滅への使者か、神のみぞ知るってわけね」


 神は知っている。見てもいる。今後の人類の行く末がどうなるか、それを知る者は今はまだ誰もいない。

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