第3話 初めてのガチャ

 次の日、前日の負けを引きづりつつ職場へと向かう。今日も残業いやだなとか思っていたら案の定残業だ。

 もういやだ。俺もガチャしたい。

 俺は退職届を提出して会社を後にした。引継ぎ?そんなもん知ったことか、俺はガチャがしたいんだ。夕方ごろダンジョンにつくとまず初心者おすすめ装備を売りつけた店主に文句を言いにいった。


「おい親父、なんだあのゴミみてえぇな装備は、危うく大けがするところだったぞ」

「あ?初心者装備買ったのかお前、あの装備だからポーションついてたじゃねぇか、破格だよ破格」

「でも錆びた剣と盾ってひどすぎだろ」

「だから初心者おすすめ装備(仮)wって書いてあっただろ、あんなの買う間抜けはこれからも続けられねぇからちょうどいいんだよ」


 ムキーとなったが周囲に人だかりができてるし、施設の人が何も言わない以上、文句を言っても意味がないがないと悟り捨て台詞をはいて帰る。


「お前のところで二度と買ってやらないからな」

「ばーか、ここしかアイテム売ってねぇんだよ、嫌なら全部ドロップで賄うか、他のダンジョンにいくんだな」


 クソっ!なんであんな店が公式なんだ。つーか冒険者の扱い雑じゃね、俺らみたいのはいくら死んでもいいってのか、落ち着け、ここでイライラしてもしょうがない、俺はガチャを回すために来たんだ。

 ガチャガチャガチャ、あ、武器の予備持っとかないとまずくね、錆びた剣じゃ効率も悪いし……。


 俺はすごすごと店に戻り、ニヤニヤした店主を睨みつけながらN鉄の剣を購入した。


 予備の錆びた剣をアイテムボックスにしまい、スライム狩りを敢行する。今日は魔石9個出すまで帰らないぜ!そう意気込んで一層を駆け抜ける、平日なのにすれ違う冒険者はそこそこいる。皆虚ろな目をして「スライム……ガチャ……」と呟いている。あぁはなりたくねぇな。そう思いながら出くわすスライムを斬って斬って斬りまくる。 

 N鉄の剣は優秀でほぼ一撃でスライムを倒してくれる。何発も殴らなきゃ倒せなかっ た N錆びた剣とは大違いだ。


 しかし魔石のドロップは順調にとはいかなかった、前回2~3時間で一個しかも効率の悪い方法でやったのだから、それ以上の実入りはあるだろうと思っていたが、出ない。全然でない。いや正確には出てるんだけど朝までやって魔石(小)4個である。5個も足りない。他の素材はたくさん手に入ったが精々2000円程度だろう。


 さすがにだるくなってきたのでダンジョンから出て換金する。そのまま家に帰り爆睡して昼頃に目を覚ましダンジョンへと再び出向く。

 暑そうなサラリーマンを見て、そういや俺仕事やめたんだった。解放感半端ねー!と同時に金なさ過ぎてやべぇ!となった。今の所持金尽きたらもう借りれるとこないぞ…

 ガチャに命運をすべて委ねるしかない。覚悟を決めてスライム狩りを再開した。


 魔石(小)の出が思ったよりもよくなり夕方くらいには残りの5個が集まりガチャを回せる数がたまった。俺は急いで施設の入口に戻ると、換金も後にしてガチャの前の列に並ぶ。


緑の髪の受付に魔石(小)10個を渡す。


「では、どうぞ」


 じゃらじゃらと魔石がガチャに投入されていく、10個入りきったところでガチャが光り始めた。SSRこいSSRこいSSRこいなんならRでも今回は許す、頼む頼む頼む!!!!


 目を閉じて祈っていると、ポンッと何かが出る音がした。俺はゆっくりと目を開けガチャから排出されたアイテムを見る。


 SR 薬草(中)


 ん?ん???ん?!??!?!?!?!

 SRきたぁあああああああああああああああああああ

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 薬草(中)ってのがちょっと不安だけどきたぁあああああああ

 だってSSRの最低価格が百万だろ、SRなら10万は固い!!これで生きれる、きたぁああ


「あぁ薬草か」

「SRなのにな、まあ(中)なだけましだね」

「単発ならいいっしょ」


 周りの声が聞こえる。え、なに外れなの?SRだからひがんでるだけだよね?そうだよね。

 俺は心配になりつつも施設内の素材買取場へと向かった。


「SR薬草(中)ですね、8万円になります」


 8万…かぁ…、いや10万は固いっていいましたけど、正直もうちょっと30万くらい行くんじゃないかって思ってましたけど、現実って厳しいすね。まぁこれでしばらく生活は出来そうだけど。


「ちなみに素材の買取については正規店と変わりありません。こちらの場合タラーへの変換が可能となっております。いかがなさいますか?」

「いえ現金でお願いします」


 先立つものがないのに施設内通貨に変えれるわけもなく、現金で8万円を貰った。二日間の稼ぎとしては充分だけどこれガチャ頼りなんだよなぁ。いやぁゾクゾクしちゃう。

 ギャンブルにすべてを委ねるってこんなに気持ちいいことなんだってもっと早く知っておけばよかった。そうすればクソみたいな仕事しないでこれたのに。


 気分の良くなった俺は帰りにスロットをしに近くの店に寄った。

 1万すった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る