最終話 俺はダンジョンに潜り続ける
「UR亀竜の甲羅が10億とはね、これダンジョン経営破綻しない?」
「そうなったら国営にでもなるだろ。これだけダンジョン産の素材に依存しているんだから」
舞と他愛のない会話をしながら街を歩く。UR亀竜の甲羅の査定に半年近くかかったのは素材の相場が安定しなかったからもある。神の選択をしてから半年、俺は相変わらずダンジョンに潜っている。
これは後から舞に聞いたことだが、普通の冒険者はほぼ毎日潜るなどせず、週3日くらいで休暇日を作るのが普通らしい、それだけ過酷だということだ。俺はそんなこと感じなかったけどなあ。
そしてダンジョン産素材による科学との融合が加速度的に進んでいった。素材の加工技術も確認され、素材を使った武器や防具、普通に服飾やボディーアーマーのようなものも作られるようになった。
ダンジョンに潜る人も半年前に比べて倍以上に増えて、世は大冒険者時代となっていた。ガチャにも変化があった。薬草しかでなくなったのだ。
薬草はポーションに加工することが出来る、初期から使用用途が明確だった素材であり、ダンジョンを潜る際には必須なアイテムだ。
ガチャの変化により、江戸川区のダンジョンの利用者は激減した。
俺たちはまだ江戸川区のダンジョンに潜っている。今は35層を攻略中だ。
俺の装備にはURで染まっている。いや正確にはLR幸運のネックレス以外でだ。
◆
「俺の願いは、LR幸運のネックレスの破壊を無効にしてくれ!!」
「ふふ、君らしいね。理由を聞いても?」
「確かに自分の人生を変えるような選択も可能だ。でも俺は気づいたんだ。人生は地続きだって。ここでいきなり人生を変えてもきっとどこかで空虚な毎日が続いてしまう。ああ違う選択をしていればもっといい人生が送れてたってな」
黙って俺の言葉に耳を傾ける自称神に言葉を続ける。
「どうせどんな選択をしても後悔する。それなら今ある幸せを続けられるような選択をしたほうがまだいい。俺はこれからもダンジョンに潜る、それが今の俺の幸せだからだ。それを支えてくれるものを永遠のものにしたい。それが理由だ」
「ささやかと言いながらも随分な要求だね、LR幸運のネックレスの効果は君も知っているじゃないか」
ふっと神は笑った。
「では、君の望みを叶えよう」
そういうと神は俺に手をかざしてなにやらパワーを送ってくる。
「装備を確認してみて」
LR幸運のネックレス(永続)
「それじゃあ、僕はこれで、君のことはこれからも見させてもらうよ」
そういうと神は消えた。
◆
神の選択から半年、俺はLR幸運のネックレスを付けて舞と共にモンスターを狩りまくった。俺の異常なほどの素材の納品に誰も不思議に思うことなく受け入れられた。有名になることもなく、それが日常だとも言わんばかりだ。
都合のいい事実とはこういうことか、俺は納得しながらも不思議に思っている部分もあった。
「なんでお前は気づいてるのかなぁ」
「いや普通気づくでしょ、むしろなんで誰もアンタの異常性を認識しないのか理解出来ないっての」
「まああの神だし、まーた不具合しちゃったんだろ、害がないから放置してますってやつ」
「私結局一回もそいつにあってないんだけど、あんただけずるいわね。しかも願いがそれって、馬鹿じゃないの」
「だったらお前は何を願ったんだよ」」
「そうね、やっぱり不老不死?この美しい姿のまま永遠に生きられるって人類にすごく貢献すると思うんだけど」
「……宝箱を空けたのがお前じゃなくて俺でよかったと思うよ」
「何よ!馬鹿にしてるの」
「馬鹿にしてま~す」
今日も俺はダンジョンに潜る。
まだ見ぬ光景、モンスター、レアなドロップ。
「そして帰りはカジノへゴーだ」
俺たちの冒険はまだまだ続いていく。
_____________________________________
これにて完結です。近況ノートにもちょっと書きますが、打ち切りではないです。
予定通りです。
最後まで見てくれた人、本当に感謝します。駄文失礼しました。
パチンカスだった男、ダンジョンの出現によりダンジョン依存症になる。 蜂谷 @derutas
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます