第21話 優菜ちゃんとデート♡
コボルトからR装備がドロップして、10層での探索を舞と続けて数か月、俺がダンジョンに潜り始めてから一年が経った。
最初はただの好奇心だった。稼げるギャンブルという宣伝文句につられ、足を運んだのが好機だった。
成り行きとはいえ、女の子を助けたりしてママ活も出来てるし。
今日は久しぶりに休暇を取って優菜ちゃんとデートをする予定だ。舞は「若い子に鼻伸ばしてきっしょ」と言われたが気にならない。すでに舞に会う前から数回会っているのは秘密だ。
いつもの待ち合わせ場所で待っているとニット帽に暖かそうなコートに身を包んだ彼女がこちらに向かってくる。
「すいません、待たせてしまいましたか?」
「いや今来たところ、今日は和人達は一緒じゃないの?」
「二人とも今日は説明会に行く日で、私だけじゃダメですか?」
「全然問題ないです」
むしろいつも3人だったし、完全にデートだよこれ。JDとデートとか一年前には考えつかなかったことだよ。
「そっか、もうそんな時期なんだね、最近は就活も早いし学校も忙しくて大変じゃない?そんなときにごめんね」
「いえ、私も息抜きしたかったので、ちょうどいいよかったです」
優菜ちゃんマジ天使、美人度で言えば舞の方が上だけど、やっぱり人間中身だよな。
俺は今回は手頃な回転寿司にいくことにしている。毎回高級店に入るのはさすがに気が引けた、そもそも俺の方が圧倒的に稼いでいるのに奢ってもらうのもこれで最後にしようと思っている。
でも優菜ちゃんとは会いたいから連絡はいつでも取れるようにしてある。
回転寿司屋に入り、4人掛けのテーブルに座る。優菜ちゃんが対面ではなく隣に座る。
「これだと寿司ちょっと取りずらくない?」
「そんなに食べないので問題ないですよ、それよりちょっと今日はこうしたい気分なんです」
おや?なにやら甘ったるい空気が流れているぞ。
いかんいかん、こういうのに勘違いして失敗したこと何回もあるだろ。
吊り橋効果って奴だ。安易にそういうことをしてはいけない。
「はは、就活が忙しくて疲れちゃったかな」
俺は平静を装いながらタッチパネルを使って注文をする。取り外し可能なタイプだったので別に座る位置はどこでも問題なかったぽかった。
しかし、今まで見せなかったこんな甘えた表情、俺が何か変わったか?
確かに1年前より、身綺麗にはなったし体も細マッチョと言えるくらいには締まっている。もしかして俺の魅力あがっている!?すると優菜ちゃんがささやく。
「ビール頼んじゃおうかな」
これ完全に誘ってるのでは?高校までは真面目な学生やってて彼女が出来たこともあるがも1か月付き合ってすぐ別れてしまった。
大学に入ってからはギャンブル繋がりの女の友達は何人かできたが、大学を中退すると疎遠になっていった。俺は俗にいう素人童貞なのだ。
彼女のサインに敏感に反応してしまう。昼間からビール?はは、なんて裏返った声で答える。
俺は気を紛らわせるようにウニやらマグロを注文した。なんか食べていないと落ち着かなかった。
優菜ちゃんはいくらかの寿司を注文したが、ビールを3杯のみ、顔も紅潮していた。軽く酔っ払った程度で前後不覚になるほどではないが、トロンとした目つきをしている。
「大丈夫?優菜ちゃん、あんまりお酒強くないなら飲みすぎないほうがいいよ」
「平気ですよ~こう見えて結構強いんですから~」
「それ弱い人が言うセリフだよ、ほらしっかりして」
そう言って寄りかかってくる彼女の肩を押し返す。あ、いいにおいがする。
いかんいかん、と気を取り直し、お茶を飲ませる。だいぶ酔っているようなので、今日はお開きにしようと会計を済ませる。
千鳥足になる彼女の腰に手を当ててお店を出る。ほのかに香るシャンプーのにおいが鼻を刺激してたまらない。
「ちょっと休んでいきませんか~」
ここでいう休憩ってカフェじゃないよな、まだ昼間なのに行っちゃっていいんですか?
俺は再度確認をしてからホテルへと入る。彼女がベットに飛び込む。このまま一気にいってもいいものか、そう思い一旦シャワーに入って体を清める。
どうする、実はホテルも初めてでどうしたらいいのか分からない。そもそもどういう雰囲気でもっていけばいいんだ?
俺は頭を悩ましながらバスローブに身を包んでシャワーから出る。
そこにいたのはスースーと寝息を立てて眠りこける優菜ちゃんの姿だった。
いやほんとに休憩かよ!!眠いだけだったのかよ!
さすがに寝込みを襲うようなことも出来ず、TVをつけて時間を潰す
「アンアン」
虚しく流れるAVを見ながら涙を流した。
「ごめんなさい!あんなに酔うとは思わなくて、こんなことになっちゃって」
優菜ちゃんが寝てから数時間、AVも見終わり、彼女を見ているとようやく目を覚ました。寝ぼけているのか、周りを見ながらぽやぽやとしている。そしてここがどんなところか気づくと顔を真っ赤にして謝ってきた。
まあそういう下心を否定できずにつれてきてしまったあたり、俺も言い訳は出来ない。気まずい空気が流れる中、俺から切り出した。
「うん、まあ今回はちょっと失敗しちゃったね、次からはこんなことが起きないように気を付けてね」
「はい、……ほんとうにすいません。誠さん」
今更ヤろうよとは言えず、休憩したホテルの部屋から出る。すれ違った男女がイチャイチャするのを、優菜ちゃんが見えないところで睨みつける。俺の殺気の籠った視線に男女がヒッと軽い悲鳴をあげるが気にしない。完全なやつあたりだがこれくらい許してくれ。
「それじゃあ…」
次は、とはいえず何とも言えない空気のまま解散した。
夕方に足を突っ込んだ時間帯、俺は煮え切らない思いを吐き出すために歓楽街へと消えていった
きもちよかった。
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