第16話 天井
イエティの奥の部屋の宝箱を巡る戦いから数か月、俺は相変わらずダンジョンに潜っていた。LR幸運のネックレスは着けずにN幸運のネックレスをつけている。
効果は感じない。
UR男爵吸血鬼の指輪はたまにイエティの洞窟に潜ってその感覚を試して訓練を続けていた。
奥にあった扉はなくなっており、再度挑むことは出来なかった。まぁ今の俺が宝箱開けたらURざっくざくで、LRすら出てしまうかもしれないしな。都合のいい話はそう何個も転がっていないのだ。
探索を終え、ダンジョンの外に出るとガチャが相変わらずにぎわっていた。
「今日からまた期間限定ガチャスタートしますよ~。貯めていた方はぜひどうぞ」
そういやずいぶん長い間魔石でガチャを回してなかったな、魔石もたんまりあるし、なによりSSR装備、もっと上のUR装備も欲しい。SSR雷の装備セットでも危険な相手が出てきてしまったのだ。安定してダンジョンに潜るためには余剰装備はあったほうがいい。
俺は溜まった魔石を緑髪の受付に渡す。
「とりあえず1000連で」
「せ、1000連ですか!少々お待ちください」
驚いた受付が大量に出した魔石をじゃらじゃらと入れていく。これでも魔石(大)とかもあるんだけど圧倒的に多い魔石(小)のせいでガチャに入れるのに手間取っているようだった。
俺は期間限定ガチャに手をかけ回す。出てくるのはNやRの氷の装備だった。今回は氷のガチャか、ちょうど15層に合いそうだな、まあもう少ししたらもっと下に潜る予定だから相性がいいかは分からないが。
ゴロゴロと出てくるアイテムを見ながら、ふぁ~とあくびをする。だって退屈なんだもん。初めの頃はガチャに夢中になった時期もあったけど、あまりの排出率の渋さにもう期待しなくなっていた。
途中のSR保障も薬草(中)しか出ないし。
999個目のガチャが終わる、最後に最低保証のSRが出てくるだろう。1000連もしたんだからSSRでも出せやこら。
ガチャが光りアイテムが出てきた。
UR氷の剣
あ、あああ、いやぁあああああああ。
UR!!!URでたぁ!!これってもしかして天井か!?幸運のネックレスは付けれないし純粋な俺の運で取れるわけないじゃんこんなの。
そうか、1000連が天井なのか、そりゃ手に入れるやつがいないわけだ。俺は溜まりにたまった魔石があるが、基本的に10連分回ったら回してしまうのが人間の性だ。しかも期間限定とか作っているあたり、絶対天井まで貯める間の期間がある。そうじゃなきゃこつこつ1000連まで回した奴が出てきてURがもっと市場に出回って騒ぎになっているはずだ。
「おい!URでたぞ!!!」
「やべぇ、あれ売ったら一生遊んで暮らせるんじゃないか」
「そもそも買い取ってくれるところあるのかよ」
「買取所もあんなの来たら驚くだろうなぁ」
周りがざわざわとうるさくなる。そりゃそうだろう、なんたってURだからな。
俺の姿がぼんやりとしか見えていないやつらの悔しそうな顔、驚いている顔、俺も出してやるぜと意気込んでいる顔などが見える。
俺はまだまだたっぷりある魔石を1000連×5ぶちこむ、全魔石だもってけドロボー。
その結果がこれだ。
UR氷の鎧、UR氷の盾、SSR氷の剣、SSR氷の小手、SSR氷の小手
あばばばばばば、UR2個も出たよ。何故かSSRも出てしかも被りだったけど。
そもそも天井なのに任意のアイテムと引き換えできない時点で中途半端なんだよ。
神が降りてきて選ばすくらいさせてくれよな。おい、自称神、見てるんなら今後のアップデートで更新しろよ。
そして俺が周りを見渡すと、そこに歓声などはなく、あまりの状況に逆に静かになっていた。
「やばくね?」
「ガチャ壊れてんじゃね」
「ていうか1000連すれば最低保証SSR確定っぽくね」
「そんな貯めれるわけないだろ」
「あいつやべぇな」
こそこそとしゃべっているのが聞こえる。耳も若干よくなったのか、遠くの声がよく聞こえる。俺はそいつらから見えないところでガチャの領域から出て、買取所へと向かう。
「すいません、これお願いします」
そういってSSR氷の小手を出す。被りだし、小手はそこまで損傷する可能性が低い部位だし、なによりURの鎧と盾があるのだ。一個くらい換金してもばちはあたらないだろ。俺が出したアイテムに驚きながら、青髪の受付はアイテムを受け取る。
「こちら間違いありませんね、納品後の所有権は完全になくなりますが本当によろしいのですね?」
「はい、全然オッケーです」
俺はそう言ってSSR氷の小手を渡すと、受付は少々お待ちくださいと言いながら武器をもって裏手へと消えていく、なんかにやにやしてた気がするけど気のせいかな。少し待っていると受付嬢が戻ってきた。
「今回の買取額、2億円となります」
はえぇ~、もう一生働かなくていいじゃん。てかダンジョンに潜る必要もなくね。
「高額買取のため、こちら現金で支払う場合分割になります。40年毎年500万円になります。タラーで支払う場合はすぐに交換できますし、高額給金ということで5割増しとなり3億タラーになります。どちらになさいますか」
俺は悩んだ。現実感のない数字を出されどっちが得か考えた。タラーにすれば気兼ねなく遊んべる。しかし毎年一定額もらえればそれだけ安定した生活を送れることも確かだ。
どっちが正解だ?いや正解などあるのか?今後のことなど誰にも分らない、人生100年時代とも呼ばれている。老後の蓄えはあったほうがいい。しかし目の前にどんと置かれたタラーも捨てがたい。実際にはカードに入金されるので目の間に置かれてはいないのだが。
俺は悩んだ末、一旦保留とさせてもらった。買取自体は決定しているのでもう少し吟味してから決めたいと思う。
「かしこまりました。決まりました再度受付の方にご連絡ください」
深々と頭を下げる女性に俺は、エヘヘなんかすいませんねって感じでその場を後にした。
どっちにしろ2億は確定したのだ。俺はルンルン気分で施設を後にした。しかしそんな俺に対して叫ぶ声が聞こえる。
「いたぁ!!!新庄誠!!」
いつか見た赤い髪の女の冒険者、名前は……なんだっけ。
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