第19話 意外な才能
「それでは現金での支払いでよろしいですか?」
「はい、お願いします」
思いっ立ったが吉日、俺は舞との探索を終えた後すぐに受付に行き、先日保留にしていたSSR氷の小手の売却金の受け取り方法を伝えた。
今の俺の稼ぎからすれば毎年500万円なんて少ないと考えるかもしれない。しかしあと40年もダンジョンに潜り続けるわけもなく、そもそもダンジョンがこのまま残り続けるという保証はない。
40年もすれば俺は60を超え老後を迎えているだろう。
そのための資金作りと考えれば、普通現金一択だったろうに。
このダンジョンは非常にたちが悪い。どれだけギャンブル漬けにさせようとしてくるのか。タラーで受け取らなかった自分を褒めつつ、今日もカジノへ向かった。
1000万タラーすった。
1000連ガチャの秘密を知った俺は、魔石を貯金すること覚えた。ガチャによる誘惑はそんなに感じないようになってきた。
そんなことよりもレアドロップや宝箱のほうがいい。時代はダンジョン探索だ。
舞との臨時パーティ結成から1週間、初日にRの防具をドロップしてから5層で狩りを続けている。R装備はだいぶ整ってきた、後は肝心のR魔法の杖だが、コボルトからドロップするのか疑問だ。
魔法系のコボルトに遭遇することは稀で、しかもドロップ品に魔法の杖は出てきていない。Nでもだ。
「ねぇ、もう魔法の杖でないんじゃないの?他の階層で探しましょうよ」
「まだ粘れるだろ、メイジコボルトから出るのを頑張るしかないぞ、セット効果もつくし、こういう地道な作業の結果出てくるレアドロップだからこそ堪らないんじゃないか」
「あんたみたいなギャンブルジャンキーと一緒にしないで、私には生活があるんだから」
そうはいってもなあ、ドロップ品はすべて渡しているし、換金すればそこそこの金額になっているはずだ。ギャンブルを毛嫌いしているようだし、一体どこにその金が消えていっているのだろうか。
女ってよくわからないところで金使うからなあ
ブランド品を買いあさるようには見えないし、美容関係か?野暮なことは聞いてろくなことにならない、俺は口を摘むんだ。
魔法の杖系のアイテムはガチャ産で出たので渡せることもないが、真面目に取り組んでドロップしたほうが嬉しいだろと思い、アイテムボックスの底にそっと閉まってある。
さすがに一か月も探して出なかったら渡してやろうと思ってる。
「今日出なかったらあんたの金でカジノいくわよ、タラーなら充分あるんでしょう。少しは憂さ晴らししないととてもやっていられないわ」
「あるにはあるけど、お前ギャンブル好きだったか?」
「嫌いよ嫌い。でもポーカーは別、あれは適切なハンドを適切な処理できれば通算で勝てるスポーツなんだから」
「お前がそう思うんならそうしろよ、そう思うならな」
そういう楽観的な奴ほど呑まれるんだよな、俺は経験則に基づく言葉をぐっと堪えた。
結局メイジコボルトには一体しか遭遇せず出たアイテムも望みのものではなかった。今日はもうおしまい!と舞が早々に切り上げてカジノへと入店する。金は自費で出すようなので俺は別口から入ってポーカーの付近にくるであろう舞を待つ。
カジノはその機密性から姿が本来のものとはことなるので、舞かどうかは特定できないが、恐らく見ていれば分かるだろうと微笑みながら見守っていた。
ディーラーの人がカードを配る。コール、ベット、フォールドと様々な言葉が混ざりあう。一人長考する露出の少ないバニーの格好をした女がいる。
「オールイン」
いきなりかよ!あれ絶対舞だろ。ブラフもくそもねえ。よっぽど手札に自信があるのか、ふんふんと鼻息を荒くしている。
初手オールインという暴挙に出た相手に、周りのプレイヤーも困惑する。初心者なのか、熟練者なのか、その判断が付かず残った全員がフォールドした。
舞と思われる人物が嬉しそうにチップを積み上げる。しかしそのあとは悲惨だった。その卓にいたプレイヤーが強かったのか、徐々に化けの皮が剥がれ始めた。
フォールド、ベットを繰り返し少額で勝っては多額で負ける、じわじわと減っていくチップ、相当焦っているようだ。
「オールイン」
再び彼女から声があがる、しかしもうプレイヤー達は怯まない。一人の女性がそれに大してオールインを返す。
バニーの女の役はAのスリーカード、対する女性の役はフルハウスだ。
「そんな…」
バニーの女は全てのチップを失い、その卓上から離れていく。他に参加者もいなくなったのでその卓はお開きとなった。
俺は間抜けな舞の姿を見てやろうと、急いでカジの出口へ向かう。
俺が待っていると舞が出てきた。俺はニヤつきながら問いかける。
「どうだった?」
「ま、余裕よね、馬鹿が一人いて大儲けしちゃったわ」
「は?お前バニーの女じゃなかったのか?」
「何あんた、見てたの?私があんな初心者と思ってたわけ?言ったでしょ、ポーカーは実力勝負、運なんてないの、わかったかしら?」
なんだよ、笑ってから慰めてやろうかと思ったのに。存外したたかな舞に驚き、同時にこいつ計算高いよな、ていうか容赦ねえなと思った。
なんか勝ち試合を見せられて俺も勝てる気がしたので舞と別れた後カジノに行った。
500万タラーすった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます