終末後と原初は、きっとつながっている

 如何なる神の思惑か、死後にエルフ女性として異世界に転生した男。

 落とされたその地は、茫漠とした汚泥の沼がどこまでも広がる世界。飲食の必要がごく薄い身体ではあるものの、全く物質を取り入れないというわけにもいかず、やむなく汚泥沼の水を飲んで悶絶したりも。

 マイクラめいた自足ルーチンのゲーム風生活かと思いきや、ある日そこに、沼の向こうから一人の人間がやって来て――


 ここからの展開が、人間の情味としては当然のものながら驚くほど無垢で温かく、いっそとてつもなく新鮮に感じられた。
 他者がいることを知ってしまったことで、彼女(彼)の生活はただ己の為だけでなく、いつか迎える誰かのための、あまりにも優しい営為になっていくのだ。

 与えられた権能を見る限り、エルフさんの存在はこの世界の再生を託された下級の神ないし半神に近いものであるように思われるのだが、さてここは崩壊した世界のなれの果てなのか、それとも?

 レビュー投稿時点の最新話付近で、彼女の体には神性とはやや逆ベクトルの機能が発現しているが、これは何を示唆しているのか。
 恐らくは世界と生命と、自己と他者の関係を縦横の軸として、ここから見たこともない、それでいて懐かしく輝かしい物語へと読者を連れて行ってくれるのではないかと期待している。

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