狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり、と申しますが、これはあたかもそのような、心の持ちようが力となる物語。
度はずれて想像力豊かで純真な心を持つ男、ロインが夢の中で神から力を授かったと思いこみ、仲間を集めて人の世を救い正すために冒険の旅にいざ出立。ドン・キホーテを思わせる出だしですがどっこい、ここはそれなりに神秘も奇跡もあるんだよってな、ファンタジーな世界。
それなりに皆素養あり、鍛錬も積んで実力を備えたメンバーが集まれば、なにがしかの勲(いさおし)は挙げられてしまう。素でやってれば何でもないんだけどそこにいちいち思い込みのパワーが載るから、過程も結果も笑いに彩られるのです。
そんな一行を醒めた視点で見つつ付き合う、遊牧民の少女ライラの視点から旅の絵巻が綴られていくけれど――
選ばれた者でも何でもない彼らの道が、進むにつれて舗装されていくさま、様々な要素がロインの妄想のストーリーを強化していく様は滑稽だけど、そこには「勇者」や奇跡の実在とささやかな救済を求める、人々の願いがあるのだと感じます。
それに応えて舗装された大路を走らば。即ちそこには見せかけでない、真物の英雄譚が生まれるのですね。
夢を思い描くことに力強いエールと、背中へのひと押しを貰える、そんなような素敵な作品。ありがとうございました!