最強VSルーキー
御影は考える。二人の奮戦を見て勝利条件は現実的でないと見切りをつけた。
(近づくと別の場所に飛ばされるのか。でも、せめて汚れて帰して貰うぜ)
勝利条件には一切関係ないが己に課した目標を全力で遂行する。
「威勢は良かったのに随分と酷い有様じゃなぁ!日皆と蒼の動きは良かったぞ?」
顔に似合わず蠱惑的な笑みで挑発する暁雨。
「上等ォ!今行くぜ!」
獰猛に口角を上げ精一杯の痩せ我慢で返す御影。静かに指輪に大河の水を指輪に仕込み、最後の足掻きがスタートした。
「
勢いよく声を上げた御影に驚いたのはうさぎだった。それと同時に猛る龍の如く巻き上がる水柱、暁雨の周りを全力で疾走する御影。
「ほぉ、これだけの水量を持ち上げられる奴は割と居るがガーデン二日目でなかなかやるじゃないか。じゃが目眩しだけじゃどうにもならんよ」
「
川底から石を引き寄せて全方位から水柱の中の暁雨を集中砲火する。
「ダミーも当たらん。負けを認め疾くその面をみせよ」
(当たるか当たらないかはそこまで重要じゃねぇ。油断の中に予想通りの行動。その中でさらに油断を重ねてもらう!)
勝負が付いたのも一瞬だった。あまり長くは保たなかった水柱が崩れる。何が仕掛けてくるならこのタイミングしかないだろうという予想で
「馬鹿か!?この速度と量じゃと当たればお主ただでは済まんぞ!?」
「さっきアンタから話を聞いた時に覚悟は決めてたさ。俺たちの初陣は勝利で収めさせてもらう」
この期に及んで絶大なブラフ。悪戯を成功させた悪童のように笑う御影の右人差し指にあるはずのソレはゆっくりと宙を舞っていた。自身へ当たる予定だった石は重力操作で威力を殺しながら更に前進する。指を鳴らすモーションが見えた御影。
「
放たれる言葉と共に暁雨の背後の指輪から大氾濫の一部が溢れ出す。
「お主らの負けじゃ」
「タダでは負けねぇよ」
指を鳴らし御影を飛ばし、後ろから迫る濁流を指の動きで逸らす暁雨。その動きで揺れる着物の袖は端は少し色濃くなり重みを含んでいた。
「ここまでやるか。なかなかいい面子じゃないかうさぎよ」
「はい!頼もしいばかりです!」
二人の世界を元の部屋に戻す暁雨。そこにはびしょびしょの三人が元の場所に立っていた。
「負けたねぇ〜」
「強くならないと」
「そう悪くはなかったぞ。センスはあるしモノもいい。お主らは強くなるよ、ガーデンを背負うぐらいにな」
悔しそうな三人と嬉しそうに話す暁雨。笑みには、なにか懐かしい思い出に耽っているようだった。
「うさぎ、判定はどうする?」
「少しぐらいは濡れたんじゃねぇの?」
「多少濡れたが戯れと思うて細かくルールを決めんかったからな。ガーデンはそういうことに厳しいんじゃよ」
「今回は直接接触が条件になると思いますので少し厳しいかと思いますね」
「ちぇー結構いい線いったと思ったんだけどな〜」
「あれは確かに凄かったね〜」
「あれみてたのか?どうやって?」
「飛ばされた先の鏡で中継されていた」
「マジか」
「まぁなんじゃ、一矢は報われてしまったからのぅ…お主らとんでもなく濡れておるし、うさぎ含めて風呂に入って服を好きなだけ持って行くとよい。わらわからの門出の祝いじゃ!」
「よいのですか?ここかなりお値段するのではないでしょうか…」
「よいよい、気にするなわらわのギルドじゃぞ?」
「甘えちゃおうよ〜うさぎ〜!」
「それもそうですね!みなさんずっと制服というわけにもいきませんし!」
「助かるな」
「お主らの服もクリーニングしておこう。着物を持ってきた時に返すとするかの」
「ありがとうございます!」
そうして更に奥に進み男湯と女湯で湯浴みを始める二人と三人だった。
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