在り方とお風呂

 一戦交えた四人と一人は暁雨に勧められ大浴場に入ることにした。男湯と女湯は高めの仕切りで分けられているが楽しそうな話し声が女湯から響いてくる。


 「暁雨さまもお入りになられるのですね」

 「良いじゃろ。両手に花というやつじゃ」

 「私はそんなにだと思うけどなぁ…」

 「お主わかっとらんなぁ。顔は勿論、健康的な白い肌に良い肉付き、双峰は立派じゃし締まるところは締まっておる。これで振り向かん男の方がナンセンスじゃろう」

 「ソンナコトナイヨ」

 「暁雨さま、少しおじさんくさいです」

 「うさぎもほらぁもっと寄るが良い」


 顔を真っ赤にする日皆とそれを聞いてヒソヒソ声で話し始める野郎共。


 「上空いてるぞ。頑張ればいけるんじゃねぇか?」

 「気にならなくはないがまだ死にたくない。俺を巻き込むな」

 「でも蒼も結構いい身体してるじゃん。インドア派かと思ってたけど意外とまぁ」

 「御影には負ける。しかし野郎でこの会話虚しいしちょっとアレじゃないか?」

 「だから花を拝んでやろうって話じゃねぇか」

 「命が足りんだろそれは」

 「そっかぁ…」

 

 少し残念そうな野郎二人。そんな向こう側など知らず女湯組は盛り上がっていた。


 「これで三層なら一層と二層ってどれだけ強いんだろうねぇ。ちょっと想像つかないや」

 

 少し遠い目をしながら話す日皆。自らがそのレベルに上がれるのかという自信のなさなのか少し体はそわそわしていた。


 「ほう?二層と一層は記録上到達者はまだおらんぞ?」

 「そうですねぇ〜もしいるのならかなりの有名人の筈ですし」

 「そうなの?私まだ上がいるのかと」


 男湯からバッシャーン!とかなり大きな音が聞こえた。


 「盗み聞きとは関心せんなぁ」

 「聞こえてくるんだからしゃーねぇだろ!つかアンタより上がいないならいないって教えてくれよ!」

 「わらわより上はそうおるわけではないが、わらわレベルも三層にはザラにおるし二層到達者も非公式ではおるかもしれん。鍛練は続けることじゃな!」

 「質問いいか?」

 「なんじゃ」

 「二層と一層に到達者がいないというのはその層に見合うレベルの権能ギフト保持者がいないということか?」

 「ふむ、難しい質問じゃ。元々ガーデン創成期では五層が一番高かったんじゃが今では三層じゃ。いないというよりは到達するという気概のある者がいないという方が近い気がするの。三層で段別困る事もないしのう!」

 「そうか、ありがとう」

 「よいよ、でも試練ゲームで大切な事は力だけではない。戦闘力皆無じゃというのに三層まで成り上がった頭脳派もおる。得意を伸ばすことを忘れんようにな」


 そんなことを話しているうちにそろそろのぼせそうになる三人。浴場を後にしこの後のことに思いを馳せるのだった。


 「色々貰ったね!しばらくは服に困らなさそう」

 「思ったより現代的な服装も多かったな」

 「助かるぜ〜このまま制服だけだと大変だったろうからな」

 「遠慮せんでいいとは言ったが流石に遠慮しなさすぎじゃろう」

 「うさぎまでありがとうございます」

 「じゃあそろそろ本題に入ろうか」

 「はい」

 「行きも帰りもあまり危険な生物はおらんと思うがそれでも夜は心配じゃ。向こうの支店に連絡を入れておくから一晩泊まってくると良い」

 「今のお主らなら日没頃には町へ着くじゃろう。のんびり待っとるよ」

 「マジかー努力はしてみるよ」

 「走ったり飛んだりするだけじゃし特に何もないと思うがの」

 「はい!今の皆さまなら権能ギフトも少しづつ発現してきていますし身体がついてくれば余裕だと思いますよ!」

 「そうかなぁ」

 「皆さまが一番驚かれると思います」

 「ではいきましょうか」

 「「「はい」」」


 こうして四人の道程は始まった。思ったより速い旅の終わりを予感させながら。

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