第6話 ほろ酔い気分で
エリーシェと出会い、数日が過ぎた。
彼女は木の実や薬草を採集し、俺は出てきた魔物を銃で狩るという役割分担が出来上がってきていた。
彼女は勉強熱心で、薬に使える薬草などをよく薬屋の店主に聞いたり、本を読んだりしていた。
「よし、今日も狩りに採集に、よくはかどったな」
「少し贅沢ができますね」
俺とエリーシェは近くの酒場に行って少しお高めの料理を頼む。
「わあ、いい匂い。すごく美味しそう」
「やっぱりビールはいいな。冷えてないにしても」
「頑張ったから、余計にいいですよね」
「エリーシェは飲まないのか?」
「私はまだ14歳ですよ」
そんなに若かったのか、と思いつつ、牛肉のステーキにかじりつく。肉汁が出てきて柔らかく、うま味が溢れてくる。
「こんなにおいしいもの、私、生まれて初めて食べました」
「おいおい、それは言いすぎだろ」
そう言う俺も、前世ではカップ麺とかコンビニおにぎりばっかり食べていたような気がする。
「私も、何か飲もうかな」
「いいのか? まだ未成年なんだろ」
「そういうの、関係ないですよ」
エリーシェはグラス一杯の白ワインを注文して、テーブルの上から一杯あおった。
「ちょっと、ペース早すぎだろ」
「このくらい、なんてことないです」
そうは言っても、ワインは後から効いてくる。エリーシェはたちまち、酔いが回って赤くなった。
「んー、もう食べられないー」
「じゃあもう帰るか? 夜も遅いしな」
俺は席を立って勘定を済ませると、フラフラのエリーシェを連れて道に出る。
「ふえー、私、もう駄目です」
「しっかりしろ。宿に着くまでは立っていてもらわないとな」
少し上等な宿の中に入り、白いベッドにエリーシェを寝かせる。
「ううん……」
彼女の着崩した服や、スカートの裾から出た太股を見ていると、何だか目のやり場に困った。
いやいや、俺もロリコンじゃないしな。
酔って無抵抗な相手を押し倒したとあっては、今後の冒険にも支障が出る。
シャワーを済ませた俺は、黙ってベッドに横になる。
今日もいろいろあったな。木の実を取っていたエリーシェが蛇に襲われたり、ワイルドボアが突進してきたところに銃弾をぶち込んだり……。
それにしても、この黒い拳銃、ブラックリボルバーとは何だろうかと考えた。引き金もある。撃鉄もある。シングルアクションのため連射はできず、シリンダーに入っているのは鉛弾のみ。
魔法銃、とでもいうのかな。
確かに、ファイアブラストなしには弾も発射できない仕様だ。
今日は魔法使いのLv5まで上がった。こんななりでも魔法使いなんだな、と考えた。前世でも魔法使いだったし、ジョブチェンジはしていないのだろう。
そうこう考えているうちに眠気が襲ってきた。枕に頭を深く乗せ、眠りにつく。
「うー……ん」
気づけば朝になり、スズメの鳴き声が外から聞こえ、カーテンの隙間からは日光が差し込んできている。
むにゅ……。
何かとてつもなく柔らかいものに手が触れた。恐る恐る見ると、そこにはエリーがタオル一枚で寝ていた。
え? ええ? 今揉んでしまったものは一体何?
狼狽する俺を尻目に彼女は寝返りを打つ。
白く細い背中がむき出しで、煽情的ですらある。
大体、俺は20代くらいの青年であり、向こうは14歳。どう考えても事案だ。この世界にはそんな法律は無いにしても、倫理的にはよろしくない。
「うん……あれ、クレドさん?」
むくりと起き上がったエリーシェは自分の今の格好を思い出したのか、顔を耳まで赤くして、バスタオルで体を隠してうつむいてしまった。
「わ、私、酔ってシャワーに行ったまま、こんなことを……」
「い、いいよ、別に。俺も何もしてないし」
そう言いながら俺の目は明後日の方を向いている。
「何だか気まずくなっちゃいましたね。私がお酒なんて飲まなければ……」
「俺も止めればよかったな」
「はい、まさか私があんなにお酒に弱いなんて思いませんでした」
「まあ、飲み始めはそうだろう」
それから、また沈黙が訪れ、エリーシェがもじもじと太股をすり合わせている様が視界の端に映る。
「クレドさん、私、クレドさんにだったら……」
熱っぽい目で俺を見てくる。昨日の酒がまだ抜けていないのか。
「抱かれてもいいと……」
「ええ?」
その先の言葉はきっと言わせてはならない。俺はエリーシェの肩を抱いた。
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