第45話 魔晶石鉱山
夜が来ると同時に例の魔晶石鉱山に赴くことにした。
鉱山都市から山道に続くトンネルがある。
地面にはトロッコ用のレールが敷かれている。
ダークアイマスクのおかげで暗いトンネルの中もよく見えた。真っ直ぐに道なりに進んでいく。やがて出口にたどり着くと、空は満天の星空だった。
山道を進むと、夜の獣たちが屯していたが、潜伏スキルで全て無視する。無駄に体力を消耗させてはいられない。
やがて魔晶石鉱山にたどり着いた。
鉱山の入り口で松明を持っているのはロックスが雇った傭兵らしき連中だ。
「そこのお前、止まれ!」
黙って鉱山に入ろうとしたら、案の定呼び止められた。
「関係者ではなさそうだな。ん? 何だその仮面は……まさか!」
傭兵の一人が近づいてくる。同時に俺は懐から拳銃を取り出し、ゼロ距離で射撃した。
『ファイアブラスト』
兜もつけていない傭兵の頭が吹っ飛ぶ。
「な、なんだそれは、魔法か!?」
うろたえたもう一人が片手剣で襲い掛かってくるが、胸の鎧ごと銃弾で撃ち抜いてやると大人しくなった。
こいつらには用がない。尋問する価値もない。
狙うはロックスただ一人。
倒れた傭兵から鉱山の地図を奪う。これで迷うこともないだろう。
襲い掛かってきた奴は一人残らず殺しながら、奥へと突き進む。リンを傷つけた罪は重い。容赦などない。
夜も強制的に働かされていた鉱夫たちは、傭兵が倒されると逃げるように鉱山を出て行った。
「お前が、例の、仮面の死神だな!」
「撃ち取れ!」
複数の傭兵が襲い掛かってくるが、一人はディープフリーズで足元を凍らせ、もう一人をファイアブラストで撃ち抜く。
「くそっ、足が凍って動けねえ!」
傭兵がジタバタしているところに銃口を向ける。
「ヒイッ!」
殺されると思ったのか、傭兵はくぐもった悲鳴を上げる。
「例の、仮面の死神ってのは、どういう意味だ?」
撃鉄を起こし、照準を絞る。
「し、知らねえ、俺は何も――」
ドチュン、と弾丸が発射され、相手は絶命した。
こいつら、俺のことを知っている? 俺が来ることを事前に知っていた……?
襲い来る兵士たちを潜伏スキルでかわし、銃で撃ち抜きながら、奥へと進む。
やがて、開けた場所に出て、ロックスのいる小屋が見えた。
辺りは松明で照らされている。
小屋の扉を開ける。
中には誰もいない。
…………。
場所を間違えたか?
そう思った瞬間、背後から斬りつけられた。
「がはっ……」
体中に電撃が走る。ゴロゴロと床を転がり、壁に体をぶつける。
「このくらいの敵の察知もできなければ、命を取られてもおかしくないのう」
そう言って斧を担ぎ、髭もじゃのドワーフはがっはは、と笑う。
「ロックス……」
「お前が今夜来ることはわかっていた。警備も増やしたのに、このザマとは、やはり傭兵は使えん」
こいつに背後から斬りつけられたのは二度目だ。屈辱に歯噛みする。なぜ気づけなかった? それより……
「なぜ俺が来るとわかった?」
「それはですねえ、旦那」
ロックスの後ろから現れたのはいつものサングラスの情報屋だった。
「こういうことでして」
「寝返ったのか、リック」
「いや、それはちがいやす」
リックのサングラスの奥の目は笑っていない。いつもの軽薄さがない。
「俺は誰の味方でもないんでさあ。より金払いのいいところにつくのは当然でしょう?」
「最低な奴だな、お前」
「旦那を始末した後で、旦那の奴隷たちもいただくとしましょう。リン、エリーシェ、それからルーナ……」
「お前……」
「さあ旦那、幕引きの時間ですぜ」
ロックスが斧を振り上げ、襲い掛かってくる。
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